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気まぐれに書評とか。

2013-01-01から1年間の記事一覧

『なぜモナ・リザは名画なのか』―なぜこれほどまでの名声を得たか、そして絵の限界に迫る

モナ・リザを知らないという人はいないだろう。そのまま、あのレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた、世界でもっとも有名といっても過言ではない作品のことである。その浮世離れした美しさと、ダヴィンチ・コードをはじめとする作品で語られるミステリアスな側…

『アンリ・ルソー楽園の謎』

『アンリ・ルソー楽園の謎』岡谷公二 アンリ・ルソーという人物をご存知だろうか。 かの『社会契約論』『人間不平等起源論』で有名なジャン・ジャック・ルソーではない。『夢』『蛇使い』といった作品で有名な、ルソーの方である。彼はフランス人で、1844年…

モノを考えるということ

昨日、ひとつ自分が看ていた企画が終わった。いろいろ紆余曲折を経て、なんとか成功したといえると思う。 企画をするにあたって、感じたことがいくつかあった。簡単に、今後のために私が企画をしながら何を思っていたか、書こうと思う。 結論からいうと、き…

『それでも人生にイエスと言う』

1年ぶりくらいに、本作を読み返してみた。 フランクルといえば、代表作『夜と霧』で知られるように、第二次世界大戦期に、実際に強制労働収容所に収容された経験をもつユダヤ人精神科医である。収容所での壮絶な体験については、『夜と霧』に詳しく書かれて…

なぜ本を読んでいるのだろうか

すっかり忘れていたが、11月3日に晴れて22歳になった。 去年は目標を立てて生きようとか思っていたけれど、最近はどうでもよくなってきている。というのも――聖書にもあったかなかったかは忘れたが――「おかれた場所で花咲く」というのが重要だと考えるように…

千葉市にムスリム街

毎度毎度、非常に斬新なアイディアをお持ちの熊谷市長だが、また斬新なアイディアをおっしゃったようで、話題になっている。 「千葉にはムスリム(イスラム教徒)街がいい」。千葉市の熊谷俊人市長が14日、新たな構想を明らかにした。「横浜の中華街に匹敵…

【書評】『ゼロ』

2000年代、日本の話題をかっさらっていた人ランキングをとるとしたら、その一人に間違いなく上がるであろう人がいる。ホリエモンだ。起業を志す若者からは、あこがれのまなざしをあびた。一方で、既得権益を握る長老たちからは、敵意のまなざしを向けられた…

【書評】『チンギス・カン』

チンギス・カンという人は、私にとってはまだまだ謎の人だ。世界史の教科書では、断然クビライの方が多く取りあげられている。チンギスに関しては、突然遊牧民の中から現れ、そのトップとして彼らをまとめあげ、強大なモンゴル帝国の基礎を作った人というイ…

いくつかの本の書評

3冊ほど本を読んだので、簡単に書評しておこうと思う。 【『科学的とはどういう意味か』森博嗣】 3.11の原発事故で沸き立つ世の中を見て疑問をもった筆者が、世の中の大騒ぎの「しかた」を批判する本であった。 「科学的」というのは勘違いをうけやすい言葉…

『アナーキー・国家・ユートピア』

ロバート・ノージックが1974年に出版した、『アナーキー・国家・ユートピア』。 私が読んでいて感じた論点は、以下のとおりだった。(まだ読みかけの段階なので、正確さにはかけると思われる。) 所得移転は必要か。 必要ならば、国家はどのレベルで所得移転…

【書評】『中国という大難』

日本では何かと批判の対象として報道されることの多い中国。もちろん、日本の報道の仕方では絶対に中国の本当の姿は見えてこない。批判によって本質的な問題点がひた隠しにされている日本のやりかたでは、間違いなく中国との付き合いはうまくいかない。 たし…

経済学は「正しさ」を教えてくれるだろうか

最近気になっているテーマだが、考えがまとまっているわけでもないのでつらつら書いてみようかと思う。 経済学は、たしかに世の中で起こる現象の説明を定量的に加えている学問として、それなりの成功をおさめているといえる。たとえば、有名な需要曲線や供給…

【書評】『世界史をつくった海賊』

ウォーラステインの『近代世界システム』を読みはじめていたので、知識の拡充をはかるために並行して読んだ一冊だった。17世紀にはオランダがヘゲモニーをにぎるが、その後なぜイギリスはヘゲモニーをにぎることができたのか。疑問だった。 16世紀イギリスの…

【書評】『経営戦略を問いなおす』

久しぶりに自分が一応もっとも関心を寄せる、経営戦略分野の本を読んだが、なかなか刺激的な一冊だった。最近自分が経営戦略に対して抱いていた疑問を、みごとに答えてくれた一冊だったと思う。 私の抱いていた疑問というのは、『世界の経営学者はいま何を考…

【書評】『街場の中国論』

内田樹による中国論。日本のガバナンスと中国のガバナンスの大きな違いや、謎めいた毛沢東の政策に対する内田樹なりの解釈が書かれている。「異形の大国、中国」を理解するには面白い一冊。 内田樹氏による中国の授業をまとめた一冊である。ご存知の通り、内…

【書評】『「自分で考える力」の授業』

日本の教育は「考え抜く方法」を教えてはくれない。だからよく日本人は、自分の意見を持つことが苦手だと言われることがある。日本人の弱点である「きちんと考えて自分の意見を持つ」を克服する方法を教えてくれる一冊。 本書の感想を一言で書く。「とにかく…

【書評】『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」』

戦後の政治・外交・エネルギー政策。そしてバブルはなぜ起こったか。日教組とは何か。これらを縦横無尽に、しかもわかりやすく解説した一冊。 伝えられない「戦後史」 戦後史というのは学校では教えられない。なぜなら、戦後史は歴史の授業では教科書の最後…

若者と中高年の溝

すごく興味深い記事を発見したので、いろいろ考えてみる。 新入社員に対して働く目的を尋ねたところ、2000年までは一貫して5%程度しかなかった「社会のために役に立ちたい」という項目が2000年を境に急増、2012年には15%まで上昇した。また「楽しい生活を…

【書評】『武士道』

ずいぶん前だが、新渡戸稲造の『武士道』を岩波文庫版で読んだ。若干昭和初期のような言い回しがあるので難しいと感じた。できれば、ちくま新書版などといった「現代語」に訳されたもので読んだほうが頭に入ってくると思った。 「武士道」という精神性は少し…

【書評】『ハムレット』

ハムレットを読んだ。いつだったか、何かの機会に読んだことがあった。久しぶりに読み返してみたが、まず第一に「とにかく面白い」。 私が読後感じたことはひとつ。不誠実な行為はいつか自分にはね返ってくる。この一点だ。国王についてもしかり、ハムレット…

【書評】『里山資本主義』

ここ半年、今後自分が生きる世界はいったいどうなっていくのだろうということを考える時間が以前よりも増えた。就活を目前に控え、少し人生について考えるようになったためだと思う。 私が思う、今後の世界の流れのポイントはいくつかある。その中で最も大き…

【書評】『北欧学のすすめ』

寝食を忘れて読みふけってしまった。本書は、北欧を勉強したいと考えるすべての人にとって最適の一冊である。北欧に関する基礎知識が、歴史・社会・文学・デザイン・言語という幅広いジャンルにわたって凝縮されている。「北欧入門」の一冊に、ぜひおすすめ…

コンビニ冷蔵庫の件

「コンビニ冷蔵庫に入る」「ピザを顔にはりつける」といった行為が発端となり、Twitterをめぐって世間が騒がしくなっているように感じられる。それに伴って、いろんな問題点が浮上することとなったが、自分としてはいまいち納得できるものがない。 ふとタイ…

【書評】『老いてゆくアジア』

著者の本はいつも私にとってとても刺激的だ。前回の『消費するアジア』の際もそうだったが、新しい視点が常に提供される。今回も、「アジアでは予想以上に少子高齢化が進行している」という新しい視点をいただいた。 アジアではかなりひどい貧困状況をすでに…

【書評】『ここがおかしい日本の社会保障』

2009年に発売された本のようなので、すでに既視感ある話題が多かったように思う。だが、それを除いたとしても私には物足りない一冊だった。著者も本書の終わりに「学者の机上空論といわれるのを覚悟しながら…云々」と書いているけれど、私はそのままこの言葉…

風立ちぬ

賛否両論を呼ぶ映画は、率直に言って「いい映画」ではないだろうか。今年ジブリが発表した映画「風立ちぬ」は、賛否両論さまざまな意見を呼び、大きな反響を生み出している時点で至高の作品と呼んでも構わないと思う。 私は普段、ジブリは映画館に足を運んで…

【書評】『消費するアジア』

アジアから目が離せない。日本のGDPはすでに中国にあっさりと抜き去られた。そして、下からはグイグイ新興国が追い上げてくる。そんななかで、日本人は自信を徐々に失いつつあるのではないかとさえ感じられる。 実際、アジアの追い上げはすさまじい。21世紀…

【書評】『夜間飛行』

「仕事をする」とはどういうことかを改めて考えさせられる作品だった。今日「ブラック企業」なるワードが横行しており、それについては常々疑問に思っているのだけれど、この本は「ブラック企業」問題に対してもある程度示唆を投げかけているのではないかと…

【書評】『プロタゴラス』

古典は読者の頭をフル回転させる。文字通り、「本と格闘する」。本と格闘するとはまさに「脳に汗をかく」感覚をいうのだと思う。とくにプラトンの作品はストーリーを追いかけやすいため、読者は文字をいたずらに精読する必要がない。その浮いた分、読みなが…

【書評】『メノン』

「だがぼくは、教えられるか教えられないかを知っているどころか、徳それ自体がそもそも何であるかということさえ、知らないのだよ。」という、衝撃的な一文が始まりを告げる一冊。まだ読んでいないのだが、おそらく、同じくプラトンが著した『プロタゴラス…