プロの棋士が勝負の極意について語った!―『決断力』
- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: Kindle版
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将棋の羽生善治をご存知でしょうか。
彼の将棋は、とにかく奇抜な(?)一手を打つことで有名です。通称羽生マジックと呼ばれるその一手は、常に将棋解説者・将棋ファン・対戦相手を驚かせています。
しかし、その一手は彼に言わせれば、羽生マジックというのは決してマグレでもなんでもなく、考えぬかれた最後の一手なのだといいます。見る側は、時間ギリギリになって発揮する火事場の馬鹿力のすごさを思い知らされるばかりです。
その原動力は一体どこから来るのでしょうか。本書を読むと、その一端を知ることができます。
極めて基本に忠実
将棋の世界は一般の世界とは異なると思う人は多いと思います。だから、将棋の棋士から学ぶことはなく、自分とは程遠い存在であると。でも、すこしでもいいから本書を読んでみてください。
そこには、ビジネスパーソンでも基本中の基本といわれる「姿勢」であふれています。
定跡は、ただ記憶するだけでは実践でほとんど役に立たない。そこに自分のアイデアや判断を付け加えて、より高いレベルに昇華させる必要がある。将棋にかぎらず、私たちはとにかく膨大な量の情報や知識に埋もれがちだ。情報におぼれるのではなく、まず、”自分の頭で考える”ことが先決だと思っている。
本当によくいわれることですね。さらにこの文章の後には、こんなことが書いてあります。「何かを「覚える」、それ自体が勉強になるのではなく、それを理解しマスターし、自家薬籠のものにする――その過程が最も大事なのである」。
将棋でもビジネスでも、あるいは学校の勉強でも、すべての基本はここにあると思います。ただ覚えるのではなく、それを身になるものとする。インプットをするだけではなく、アウトプットまできちんと行う。
将棋の名人でさえ行っているのですから、まして一端の学生である自分が行わないわけにはいかないと感じました。
単純に考える
将棋の場面では不確定なことも多いため、羽生さんが考えていることは、とにかく難しく考えないことなのだそうです。まして、10手先を読めるか読めないかの世界なのですから、最後は「どうにでもなれ」という気持ちで手を打つこともあるそう。
「どうにでもなれ」で羽生マジックが起きてしまうのは、これは一体どこからくるのでしょうか。それは、経験であると本人が語っています。いわば「直観」なのですね。直観は経験によるところが大きいです。積み重ねが大切なのだと感じます。
ちなみに、将棋の一手も先日紹介した「仮説思考」と同じく、「仮説」の中から選ばれたものなのだそう。一度に80手程度思いつくそうなのですが、その中から一気に2、3手に絞ってしまうそうです。絞れるかどうかは経験によるところが大きいそう。
物事が複雑になればなるほど、論理的思考は無力になります。ですから、そこで幅を効かせてくるのは直観なのです。論理的思考に頼りきりで考えるのもよくないなと、改めて感じさせられました。
羽生マジックは、基本に忠実に将棋を行い、なおかつシンプルな一手を目指し続けた結果なのかもしれません。
おわりに
私が本書で一番気に入った部分についてご紹介します。
以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は、 十年とか二十年、三十年同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。直感でどういう手が浮かぶとか、ある手をぱっと切り捨てることができるとか、確かに個人の能力に差はある。しかし、そういうことより、継続できる情熱を持てる人のほうが、長い目で見ると伸びるのだ。
「継続力」。まさか、これを将棋の天才が口にするとは思っていませんでした。モチベーションの維持についても、このあとの文章で語っています。そのくらい、「継続」が大切なのだなと。
そしてこれは、学業にもビジネスシーンにも示唆に富んでいるのではないでしょうか。今自分がやっていることを大事に続けていきたいなと思いました。
社会人になってもしっかり読書と筋トレは続けていきます。
関連書籍
元々『決断力』を知るきっかけとなったのは、この本でした。