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気まぐれに書評とか。

トンチンカンな質問をされるのは、自分自身に原因があるのかも?―木村亮示・木山聡『BCGの特訓』

今年に入ってから買って、3回くらい読み返した本です。本日3回目読み返しましたが、そういえば書評をまともに書いたことがないと思い書きます。

最近悩んでいることがあります。ひとつは自分自身の成長について。そしてもうひとつは、新人の育成です。あ、新人のみならず配属された技術派遣の人の教育も含みます。今日は、新人の育成の上で困った「トンチンカンな質問問題」を、ご紹介する本を参考に少し考えてみます*1

質問の質が低すぎる!

新人(技術派遣)の育成についての悩みは、「質問の質が低すぎる」ということです。具体的には、「具体的な質問をしてこない」という悩みです。とくに40歳をゆうにこえた派遣の人でさえ、質問の質がとても低く、正直辟易する毎日でした。

「具体的な質問をしてこない」というのはどういうことかというと、2つあります。「仮説をまったく挟まない質問」です。要するに「どうすればいいですか?」みたいな質問をしてくるケースです。もうひとつは、「事実だけを説明して私に何を聞きたいのかよくわからない質問」です。「プログラムがこうこうこうなっています」という質問(雑談?)に来て、私としては「で?」となってしまうのです。正直とても困っていて、直してほしいんですが、40こえたおじさんに「質問のしかたを直してください」と伝えるのは、本人のプライドも傷つけちゃうしよくないことだな〜と思っていたんですね。

どちらにも共通していることは、「答えを他者に求めている」ということです。責任を負いたくないのか、はたまたただ思考停止しているのかどちらかはわかりませんが、いずれにせよ自分で答えを出す気がないのだな…と感じてしまいます。そして、こういう人はそもそもマインドセットから甘いので、マインドセットから直していかないといけないんですね。

じゃあマインドセットを40歳こえたおじさんに教えますか?というと大変失礼な気もしてしまうわけです。そこでいい方法はないかなと思ったとき、「私がちゃんと聞き返す」ということが必要なんだなと本書を読んで思いました。結構できていないかも。答えを与えちゃってるかも。私が頭をウンウン悩ませて、結論を出して伝えてその通りに作業をしてもらう、みたいな流れになってしまっているかも。そう思いました。

具体的にではどのように聞き返していくか?どうすればお互いにとっていい質問タイムとなるか?それは、私自身と相手の理解度を確かめ合うということを目標とし、「よりよい聞き返し」を繰り返すことなのではないでしょうか。たとえば、「今どこまでわかっていて、どこでバグが発生していると思いますか?」「そのオペレーションをすると、このメソッドや変数に何が入っていて、その結果として何が返ってきていますか?」「投げられている例外はどういうもので、どういう想定が考えられますか?」などと聞き返していくことです。

この方法のいいところは、質問した側の気づきを促すところです。多くの普通の人は、わからない事象が湧いてきて、頭で考えてもわからなくて、わけがわからなくなってきてその状態でリーダーに質問に来ます。そしてその「わからないこと」を整理してあげるのは、リーダーのひとつの仕事なのではないでしょうか。その質問の繰り返しによってメンバーは気づきを得て帰っていってくれたら、もしかして自分で解決してくれるかもしれません。

ただ一方で、これには質問される側に高度な「問いを立てる技術」が求められます。なぜなら、適切に問いを立ててメンバーに投げかけるようにしなければ、思考の整理のために来たはずなのに、余計に混乱して帰ることになるからです。正直、問いをわざわざ立てるのはとても面倒くさいです。問いを立てる行為はとてもめんどくさい行為なので、多くのマネージャはそれをせずに怒って突き返すか、冷たく返すか、あるいは一緒に答えを出してしまいます。

しかし、それではメンバーは成長しないです。そして、また同様のトンチンカンな質問をする→こちらのイライラがたまる…の連鎖が起きてしまいます。その連鎖を解決するために、あえて答えを渡さないで質問を繰り返すことは重要なのではないでしょうか。本人に考えさせ、どういう問いを立てるとマネージャーがいい答えを返してくれるかを禅問答方式で伝えるのが一番いい方法かと思います。

そしてなにより、40歳をこえたおじさんにマインドセットを教え直さなくていいのが楽でいいですね。

仕事の任せ方が悪い?

一方で私自身の仕事の任せ方が悪い説もあります。本書を読んでだいぶ反省したのですが、仕事の任せ方にはいくつか方法があるようです。

まず前提として、個々人のスキルレベルは当然把握する必要があります。ただ、私の仕事は業務ロジックも計算ロジックも複雑怪奇で、外資系の金融機関でバリバリFEやってました、というレベルの人でない限り、新人も40歳を超えたおじさんも大差ない、みたいな仕事なので、スキルレベルはほぼ一概にあまり高くないと想定するのが無難だなと思っていました。

ただ、個人の思考力を測る方法はあって、それが先程あげた「質問の仕方を観察すること」と、「聞き返しの結果、どのような答えが返ってくるかを観察すること」かなあと思っています。両方とも、その人の思考回路をたどることができるので、仕事を任せる際にはその人が迷わないようにどう任せたらよいかを判断できます。

仕事の任せ方としては、たとえば、「こういうふうに考えられるけど、それが正しいか調査してもらえますか?」という仕事の任せ方と、「この手順で作業をしてくだしさい。いじるクラスはここで」みたいな任せ方を使い分けるとよりよいです。また、よほどできる人には、「じゃあ、このチケットお願い」程度で十分です。

明日から使い分けをしてみよう、と思いました。

質問の仕方が悪いのも、原因は自分にあるのを忘れないようにしよう

勢いで書いてここまで来てしまいましたが、最後に重要なことをひとつ書き留めておきます。それは、周りの質問の仕方が悪いのは自分自身に原因があるかもしれないということです。原因自分論です。

とくに、自分自身の仕事の任せ方が悪いのかもしれない、ということは改めて確認すべきことだなと思います。丸投げ可能なぐらいにその現場での経験があるような人に丸投げは可能ですが、まだ配属されたばかりの人に丸投げをしても頭の中には「???」しか浮かびません。

一方で、容易に答えを与えるようなことはしてはいけないです。あくまで、問答を繰り返して相手に自分で考える習慣をつけさせるしかないです。最初のうちは時間もかかるし、自分が答えを与えれば5分で済む話が1時間かかることだってあるかもしれません。が、そこはむしろその時間も込でスケジュールを先読みして、タスクを長めに任せるマネジメント側の努力が必要です。

明日からの仕事の任せ方と質問への接し方を少し変えてみようかなと思ったいい機会でした。もっとも、「仮説を立ててから質問する」「考えるとはどういうことか?」くらいの話は大学やあるいは研修などで教えておいて欲しい、基本的なことなんですけど。

BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制

BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制

*1:私はまだ社会人2年目で、まだまだひよっこなのです。しかし、それなりにメンバーを抱えるプロジェクトを任されていて、年齢層も幅広いみたいな状態です。