『経営者の条件』
by、ピーター・ドラッカー。
ドラッカーは経営学の世界では実はほとんど出てこなくて、海外の経営学者もあまり評価してないという話を前にどこかで聞いたことがある。たしかに、ドラッカーはデータに基づいて普遍的な法則を導こうとしたタイプの学者ではない。どちらかというと、哲学者や思想家に近い。だから、数値やデータが重視される経営学や経済学の世界では評価されないのだろう。
だが、一方でアカデミックな世界に生きない人にとっては、よき道標となる。私のような一般人には、ポーターよりもドラッカーの方が共感度が高い。今日は、そんなドラッカーの著作をまた1つ読んだので、ここにご紹介したいと思う。ただ実はこの本、同じくドラッカーの名著集をまとめた『プロフェッショナルの条件』と似通っていて、一度読んだ内容が多かったため、より実用的な部分だけを読みたいと思う方は、下の『プロフェッショナルの条件』を読まれるとよいだろう。
- 作者: P.F.ドラッカー
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/11/10
- メディア: 単行本
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プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
- 作者: P・F.ドラッカー,Peter F. Drucker,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2000/07
- メディア: 単行本
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メインメッセージは「成果をあげるために必要なこと」
この本で語られることは、仕事の際に「成果をあげるために一体私たちは何をなすべきか」という話である。なぜなら、経営者という存在はなにはともあれ「成果」をあげる必要がある存在だからだ。組織のトップとして組織を背負っている限り、経営者は成果をあげなければならない。
そのために、ドラッカーは以下の8つの習慣が必要だという。
- なされるべきことを考える
- 組織のことを考える
- アクションプランを考える
- 意思決定を行う
- コミュニケーションを行う
- 機会に焦点を当てる
- 会議の生産性を上げる
- 「私は」ではなく「われわれは」を考える
シンプルながらも、このことをしっかり心に刻んでおく必要がある。私はチームの運営程度しかしたことがないので、経営者にとって大事かどうかはわからないが、チームのトップに立つような人でも重要なことがたくさん書いてある。
1、2は、端的にいうと青写真を描けるかという話。これはチームリーダにとって必要。そして、3ができないと、その青写真の実現に向けて動き出せない。4、5がなければ、チーム全体を動かすことができない。6は、本書では「問題ではなく機会chanceに焦点を当てよ」と説明されている。たしかに、問題解決に注力してしまう組織だと前に進まない。7は、これを定期的に行わないとメンバーのモチベーションに影響を与えかねない。8は、チームのフォロワー・リーダーともに必要な視点だ。
成果を上げるための制約条件は時間だ
私が今回本書を読んで一番学んだ、ぜひ実行したいと思っているのが時間に関する章だった。この章は、次のような話から始まる。
通常、仕事についての助言は「計画せよ」から始まる。…私の観察では、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする。次に時間を管理すべく、時間に対する非生産的な要求を退ける。そして最後にこうして得られた自由になる時間を大きくまとめる。したがって、時間を記録する、整理する、まとめるの三段階にわたるプロセスが、成果をあげるための時間管理の基本となる。
私はとくに、「知的生産者には、小さな時間は役に立たない。大きなまとまった時間こそが、成果をあげるために必要だ」という部分が強く印象に残った。というのも最近、どうも小さな時間しか取ることができず、自分自身問題解決に注力してしまっていたからだった。
なぜこのように「小さな時間」しか使えない事態が発生したのだろうか。それは、ほかの注力すべきでない仕事に対して時間を使いすぎてるからだ。時間を使いすぎてしまうのは、あらかじめ使う時間を決めていないから起こる。この仕事に、これだけの時間を使うと決めること。これだけでも、幾分かまとまった時間を生み出せるようになる。
最近忘れていた基本中の基本事項を、久しぶりにきちんとやろうと思わされる一節だった。
私はこれから別に経営者になるわけではないし、一社員としてとりあえず働くことになる。しかし、「成果をあげる」というのは平社員にも必要な視点。とくにコンサル会社の場合は、個に対しても成果を求める。ヘタをしたら、会議ひとつに対しても「バリュー」という名のもとに成果を求められる。その際何が必要かを、常にドラッカーの言葉を胸に冷静に考え続けたい。