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気まぐれに書評とか。

女ごころは残酷だ――『女ごころ』

サマセット・モームにハマって第三弾を読んでみました。『女ごころ』という作品。この本は、ページ数が少なくすぐに読み終えられるので、モーム入門にはいいかもしれません。

女ごころ (ちくま文庫)

女ごころ (ちくま文庫)

主人公はイギリス出身の貴族階級の女性。現在はイタリアに住んでおり、エドガーという男性からプロポーズを受けます。この男性、近々インドの提督になることを約束されたすばらしい男性ですが、歳が20歳上。昔から主人公の女性のことを知っていて、少女の頃から彼女を愛していたそうです。長年の恋、ようやく実ったといったところでしょう。

ただ、エドガーからプロポーズを受けたとき、返事を渋ってしまいます。2、3日待ってからもう一度返事をすると言って、一旦彼との今後を考えることにしました。そんななか、晩に参加したパーティーで事件が起こります。チャラくて浮気性の男(と噂されていた)ロウリー、さらにそのパーティーにたまたま招かれていた下手なヴァイオリン弾きであるカールと出会うことになりました。

途中からロウリーに口説かれ始め、車に乗って少しドライブしたところでやっぱりロウリーが気に入らず、いったん自分の家に引き返す途中でヴァイオリン弾きのカールと出会います。そこからカールを自分の家に引き込み、話をしているうちにカールに惹かれ、カールとワンナイトラブを過ごしたところで事件は急展開。カールが主人公との永遠の関係を迫りますが、主人公にその気はなく、カールはなんとその晩に彼女の部屋で自殺してしまいます。ここまで、経過した時間を想像すると半日も経っていない。プロポーズを受けてから12時間くらいと言ったところでしょうか。

その後、カールの遺体を巡って主人公はほんとうにどうしようかわからなくなってしまいます。遺体を隠すべきか?それとも、知らない男を家に招き入れたことを白状するか?迷ったとき、ロウリーの存在を思い出します。そして、ロウリーに連絡を入れてしまう。

で、ここからロウリー登場であとはわかりますね。女としてはやはり、捨てられるとわかっていても、傷つけられるとわかっていても、危険な男性を求めてしまうということがよく描かれています。

『女ごころ』というタイトルですが、男ごころについてもなかなか深い洞察があって、とくに次のロウリーのセリフが好きだなと個人的には思いました。

知るかぎり、僕が自由にできる人生はこの一回だけ。とっても気に入っているよ。折角与えられた機会を活かさなかったら、それほどバカなことはないじゃないか。僕は女が好きだし、不思議なことに、向こうも僕を好きらしい。僕は若いし、若さなんていつまでもあるものじゃない。機会が与えられている間に、できるだけいい思いをして何が悪い?

このセリフからもわかるように、ロウリーは、噂では浮気性で何も考えない男などと言われてみましたが、実は意外に冷静で策略家で思慮深く、そこに主人公は惹かれてしまったのでしょう。最後、結局エドガーとは婚約することなく、ロウリーと人生をともにすることを選びました。

サマセット・モームの魅力

いったいモームのどこがおもしろいんだ、と言われるとなかなか難しいです。今回の『女ごころ』も、正直時代が違いすぎますし(なんてたっておそらく60〜70年前のイタリアが舞台ですから)、日本とヨーロッパとでは文化も違いすぎます。そもそも夜にパーティーなんてそう頻繁にこの国ではやりませんしね。貴族階級なるものも、とうの昔になくなってしまっています。

が、人間の本質って文化によらずどこか変わらないところがあって、心を許してしまった相手であればやすやすと部屋に招き入れてしまいますし、その後どうなるかを考えずに勢いと思いつきで行動してしまうところもまた、文化の差ではなく人間の本質なのかもしれません。そういった人間ってこういうところあるよね、がふんだんに作品内に散りばめられているのがモームの魅力なのかも、と個人的には思います。

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