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気まぐれに書評とか。

ポーターについて、よく理解していますか

 『ポーターの「競争の戦略」を使いこなすための23問』を読みました。ポーターの解説本としてはピカイチだと思います。とくに、ポーターを「使いこなす」ことに主眼を置いた本書は、ほかとは文字どおり「差別化」できているといえます。

 本書は、ポーターの知識を持ちたいだけの人には向いていません。ポーター理論を概説した本ではないからです。そうではなくて、元現場のコンサルタントが、ポーター理論をいかすためにどうしたらよいか悩みぬいた成果が、ここに現れているといえるでしょう。

 本書では、特定の顧客に対して差別化戦略をとるためにはどうしたらよいかについて論じられます。というのも、コストリーダーシップ戦略は業界一位の企業でしか発揮できないという前提に基づくからです。世の中には一位の企業よりもそれ以下の企業の方が圧倒的に多いわけですから、至極当然の方向性といえます。

 「差別化」ということばは、漢字にすると3文字でとても簡単ではありますが、中身は相当難しく奥が深い問題です。差別化戦略をとった企業を潰すには「模倣戦略」をとるのがいいのですが、その模倣戦略を競合企業にとらせないために、「模倣されにくい賞味期限の長い差別化」を行わなければなりません。ですが、これがものすごく難しい。

 本書ではブルーオーシャン戦略をヒントに、賞味期限の長い差別化を考えていきます。つまり、提供価値をきちんと定めることができれば、賞味期限の長い差別化も追求できるかもしれないという考えです。これは納得しました。

 ポーター理論についてさらに理解を深めたい方にはおすすめの一冊です。