multiplus

気まぐれに書評とか。

【書評】『自分がいなくてもうまくいく仕組み』

 一冊読了。友人から借りて読んだ。

チームマネジメントの画期的な一冊。読んだ感想としては、小さな組織でこれを実行するのは簡単かもしれないが、大きな組織でこれを実行するのはなかなか難しそうだなと。ただ、会社全部を変える必要はなくて、せめて自分の部署からだけでもはじめるのは十分アリではないかと感じた。

気になった部分や共感した部分を3つほど書き抜いておこうと思う。

プッシュ型より「プル型」

最近、リーダーシップのスタイルが変わりつつあるという事実をよくビジネス書などで見かける。今月号のクーリエ・ジャポンにも、「プル型」のリーダーの必要性が示唆されていた。時代のはやりなのだと思う。

私の会社のマネジメントスタイルは、上から強制するプッシュ型ではなくプル型で行なっています。どれだけ能力的に向いていると思える仕事でも、社員が望まないことを任せることはありません。

プル型のリーダーとは要するに、プッシュ型のように上から指示を押し付けるようなマネジメントを行うのではなく、部下の主体性を引き出すようなリーダーシップのとりかたをいう。

これは、仕事に「やりがい」を求める現代の人たちにあった、非常に合理的なリーダーシップのとりかただと僕は思う。押し付けとしての指示を出し続けていると、いつの間にか部下はやりがいを感じなくなってしまい、組織を離れるという結果になることも少なくない。それを防ぐという意味でも、プル型のリーダーシップは大切である。

ノウハウ(Know How)より「ノウフー(Know Who)」

みなさんにも、やたら「人脈をもってます」アピールをする人が周りに結構いると思うのだけど、これはある意味で合理的な選択ともいえる。というのも、知識は人に教えてもらったほうが自分で探すよりも短時間で済むし、なによりも自分の知識の幅を広げてもらうには人に教えてもらうという方法が一番早いからである。Googleの検索バーに一人で向かい合うのと、隣に誰か一緒にいて向かい合うのとでは出てくる検索ワードの量も違ってくるだろう。

自分自身が知れる情報には限りがありますが、その分野に詳しい人脈があればいつでも最先端の情報を教えてもらうことができます。要するに何を知っているかより誰を知っているかであるということです。いろんな勉強会や交流会に参加して人脈を増やすのも良いですが、人脈が増えていく仕組みを作ることをおすすめします。

それに加え、上にもあるように、その分野に詳しい人から直接情報を聞いたほうが、最新情報を手に入れられる確率がグンと上がる。変化の激しいIT業界だからこそ、こういった最新情報はときに企業の勝敗を決める致命傷にもなりかねない。

社会学の用語で、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)というものがあり、近年ではこれが重視されはじめているように感じる。時代の流れとしても、Know HowよりもKnow Whoを重視したほうが合理的な選択だと言える。

また、人脈を引き継げる仕組みも作っておいたほうがいいと僕は思う。具体的には自分のコピーを自分の参加している会合に連れて行って、自分の友人と話をさせることでコンタクトを作る。これはもしも自分がチームからいなくなり引き継ぎをしたとしても、自分のコピーがスムーズに自分の代わりをしてくれるということにもつながってくる。

目標を数字にすり替えない

最後に気になったのが、会社の理念や目標を現場にブレイクダウンする段階で、数字を設定しないということである。これはついついやってしまいがちで、僕自身もやってしまったことがある。

だが、定量的な目標を定めるのは事業計画の段階で十分で、部署の目標には適さない。定量的な目標はそれはすなわち「ノルマ」に変わってしまうからである。1か0かの世界になったときは諸刃の剣だ。達成できたときはチームの雰囲気はよくなるだろうが、達成できなかったときはチームの雰囲気は間違いなく悪化する。

ただし、ここで気をつけなければならないのは、現場レベルにブレイクダウンする過程で、目標を数字などにすり替えてはいけないということです。数字とはイコールノルマです。ノルマを先に掲げてしまうと、どうしても理念は疎かになります。

目標設定というのは甘すぎてもダメで厳しすぎてもダメだ。目標設定は本当に難しい。これは慣れるしかないのかもしれない。ただひとつ言えるのは、それが部署のチームメンバーを燃え上がらせるものかという点には気をつけたいということだ。

ビジョナリー・カンパニー1でも、目標設定の重要性は説かれていた。また読み返しておこうと思った。