multiplus

気まぐれに書評とか。

アマゾンの考え抜かれた事業展開がすごすぎる―角井亮一『アマゾンと物流戦大争』

今月のTSEPの課題本。ロジスティクスが今月のテーマということでとても楽しみにしていたんですが、急遽お仕事が終わらないことが水曜日くらいに発覚し、残念ながら参加できませんでした><

私も最近になってAmazonのPrime会員になったのですが、これすごすぎません?Primeと書かれた商品なら最短その日中、遅くとも次の日の午後には届くという脅威の速さ。おかげで、帰宅時間がとても遅い私でも、欲しい物をAmazonで買って、宅配ポストで受け取るみたいな生活ができるようになりました。

気になっていたのは、「なんでこんなに速いんだろう?」ということですよね。これって、Amazonの倉庫がいたるところにあって、それなりに在庫を抱えていることによって実現できているようなんです。在庫って負債なので、普通の会社は在庫なんて持ちたがらないんですが、Amazonはそこをゼロベースで考えて、多少の赤字は覚悟で「ストックポイント」を増やすことで対応したそうです。

これはとても有名な話ですが、Amazonの年間の売上はここ最近 y = 3x くらいの傾きで急成長しているように見えますが、営業利益は実はほとんど横ばいなんですよね。じゃあ、その売上と営業利益の差はどこから出ているかというと、大半を投資に回しているのだそうです。普通、日本の会社なら内部留保とかするところですけど、Amazonはすべて顧客サービスのために使っている、ということです。

最近、楽天が徐々にかつての勢いを失いつつあるとニュースで見た気がしますが、Amazon楽天の圧倒的な差はこのロジスティクスにあるようです。Amazonは各拠点(ストックポイント)に在庫をためておいて、それを注文地から最も近いストックポイントから発送するという手法をとるので配送が速い。でも、楽天は配送については各店舗に任せる「モール型ネットショッピング」を展開しているので、配送の速さには限界があります。これが、楽天Amazonの勝負を決め始めている、ということです。

ロジスティクスって、ほとんど私たちが意識することのない存在ですが、これがとまってしまうと実は私たちの生活はほとんど成り立たないです。主要高速道路が1つ崩れ落ちたとか、トラックが足りなくなっただけで、私たちの生活は非常にリスキーなものになります。だから私は、この本を読んでインフラとか物流を支える人たちを尊敬しました。

私は金融業界側にいるのでどうしても物流とかインフラというものがある前提でビジネスの話をすることになるのですが、これらがなくなった世界を考えるとゾッとします。だからインフラが安定運用されていることはとてもすばらしいことです。

この手の本は自分が本屋さんで選んでいる限りは決して手にとることはないので、やはり読書会に出るっていいなと思います。次の本も楽しみですね。

アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書 495)

アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書 495)