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気まぐれに書評とか。

2016年上半期、読んでよかった本

長期休暇につき、たまには本のことを思い出して書かねば、という思いに駆られて書く。あまりいい言葉ではないけれど、今年は本当に忙しく、本を読む時間が電車の往復30分間だけ、という時期が数ヶ月続いています。したがって読んだ冊数も少ないですし、疲れて半分寝ながら読んでいた本もあるので、内容を覚えていないこともしばしば。

最近こんな記事を見かけました。半分あたっていて、半分あたっていないと思います。しかし、参考にはなります。

結論からいうと、デキるひとたちは集中したインプットをしています。 みんながみんなというわけではありませんが、頭の回転がすごいひとというのは事前に膨大な量のインプットをまとめて行っている可能性が高いです。 取り組む前にまとめてインプットしておくことで全体像を把握でき、また勉強にかかる時間も減らせる。 彼らはあまり語りませんが、実は裏でやっているというパターンがほとんどです。

デキる人の勉強法 優秀なプログラマは何をしているのか - ケーススタディの人生

この記事内で忘れられていることが1つあります。それは、集中したインプットを可能にするのは、日々の継続的なインプットである、という前提条件です。集中してインプットするということは、短期間に大量の概念を学習するということです。しかしそれは、普段ろくに勉強をしていない人には不可能な話です。

だから、継続的なインプットをし続けるためにも、寝ながらでもいいからとにかく文字を読むことが大切ではないかと思っています。そして、すぐには役に立たないかもしれないけれど、将来的にいつか役に立つかも、という意気込みで最近は本を読んでいました。そんな上半期の良かった本8選です。

とくにテーマがあって選んでいるわけではありません。「いい本」の基準は、どうやら読んだ時期によって違っているようです。もっとも、「いい本」はかならずしも役に立つ本ではないし、何かの役に立たせるために本を読んでいるわけではありませんが。

  1. 『職業としての小説家』

職業としての小説家 (Switch library)

職業としての小説家 (Switch library)

数々の小説を世に送り出してきた村上春樹の書く、ある種の自伝です。有名すぎる本かもしれません。この本から非常に多くの影響を受けたように思います。優雅に見える村上春樹ですが、しかし裏ではかなりの泥臭い勝負をしていた事実が明らかにされます。村上春樹はどちらかというと計画的に物事を進める方ではなく、自分の感性に任せて思いつきで進める方なように感じました。私も村上春樹と同じようなタイプなので、共感できるところが多々ありました。

何かを極めるには、1冊の本になるくらい思考できなければならないんですね。改めて、一流に上り詰めた人のすごさと強さを感じた一冊でした。

  1. 『BCGの特訓』

BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制

BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制

3回くらい読みなおした本。今読みなおしていたら、また読みたくなってきた。BCGはほぼ同業者なので、参考になることがとても多かったです。この本にかぎらず、成長する人、成長して一流に上り詰める人にはどうやらこの一文が共通して当てはまるような気がします。

BCGには、頭を使わず、ただこなすだけの作業は存在しない。

  1. 『「社会調査」のウソ』

世に言う「アンケート調査」がいかに怪しく、根拠に乏しいものかという話。さまざまな新聞のアンケート調査(筆者はそれを、「ゴミ」と呼ぶ)の欺瞞をつまびらかにする本。非常に影響を受けた。すくなくとも、新聞やネットのアンケート調査結果を疑って見る目はついた。

アンケート調査の大半は、「バイアス」を免れていないように思います。それはアンケート調査するターゲットに問題の大半があるようです。サンプルが少なすぎたり、サンプルを考えなしに選んだ故にサンプルの属性が偏っていたり、あるいは、自分の考えた結論を適当に裏付けたいがために、そうなりそうなサンプルを選んでいたり。テレビに多いですね。

  1. 文化人類学への招待』

文化人類学への招待 (岩波新書)

文化人類学への招待 (岩波新書)

いつか時間ができたときに、徹底的に学んでみたい分野、「文化人類学」。現代の社会問題を考えるときに、まずまっさきに考えるべきだと思うのが、「そもそも人間って、どういういきものなんだっけ」ということ。この視点って仕事をしているとどうしても忘れられがちなのですが、大事だと思うんですよね。仕事の場面では、常に理性を偏重することを求められるのですが、案外それが働く人を苦しめていたりする。そんな視点を提供してくれるのが、この文化人類学だと思っています。

あと個人的には、フランス現代思想のポスト構造主義あたりを深く理解するためには必須かもなあという考えから、読んでみました。

  1. 純粋理性批判

純粋理性批判 上 (岩波文庫 青 625-3)

純粋理性批判 上 (岩波文庫 青 625-3)

学生のときは特定の章だけしか読んでいなかったのですが、3週間くらいかけて通読してみました。思った以上にしんどい。いろんな概念が登場してきて、それらを整理しながら読まないとダメです。時間ができたときにじっくり再読しようかと思います。

アプリオリな総合判断は可能か、というのがこの本の主題なんですが、そもそもアプリオリなものって存在するんですかね。結局人間がいないとあらゆるものは存在しているとは言い切れないと思うんですが。でもそうすると、惑星とかのように人間が出現する太古からあるものはどうやって考えればいいんでしょうか?「存在」という言葉にそもそも誤りがあるんでしょうか?あるいは、言葉の限界なんでしょうか?そんなところを考えさせられます。

  1. 『実践ドメイン駆動設計』

実践ドメイン駆動設計

実践ドメイン駆動設計

これを読んで、とりあえずウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」を思い出した。結局、チーム内の言語ゲームを理解しないと大規模システムの構築はうまくいきそうにないなと。そんなことより、個人的にはRepositoryとかEntityとか、そういうスニペットが非常に役立っています。コードを読むときに非常に役に立っています。一読の価値ありです。

  1. 『ギリシア人の物語』

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

古代ギリシャ好きにはたまらないですね。テルモピュライの戦いのところがやっぱ最高でした。これぞ塩野クオリティ。今年の年末にもまた出るんですかね?もちろん買いです。

  1. 『国家はなぜ衰退するのか』

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家間でなぜ貧富の差があるのか?その謎を解き明かす一冊です。個人的には、私有財産制の重要性を思い知らされました。