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気まぐれに書評とか。

知っておきたい「お金の教養」

最近生命保険の営業を受けたり、周りの結婚話を聞くようになってきました。それを聞くたびに、歳を重ねたなあと感じると同時に、「意外に世の中のことがわからないぞ」という不安に駆られてきます。そんなこんなで、随分前にライフネットの出口さんが講演中に「今度、若い人向けのお金の本を出すから読んでみてよ」と言っていたことを思い出し、読んでみました。

「お金の教養」というと、どうしてもファイナンシャルプランナーの試験のような、○○金はこうで、○○保険はこうで・・・というような堅い内容を想像しがちですが、この本は少し毛並みが違います(逆に言うと、そういう内容を望んでいる方には物足りないかもしれません)。この本は、人生の先輩が、若い人に「こういうふうにお金を考えるといいかもね」と教えてくれる本だと思います。「考え方」というのは、すぐには役に立たないかもしれませんが、しかし一生使えるものだと思います。その点で、私はこの本を今の時期に読めてとてもよかったかなと思っています。

普段本を読まない人にもこの本はぜひ読んでみてもらいたいです。もっとも、「考え方のひとつ」として客観的に読むのがいいと思います。出口さんもそれを望んでいるはずです。

1. よくある「若者は損をしている!?」の話

さっそくですが、みなさんは「世代間格差」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「世代間格差」とは、主に年金を受給する際の文脈で出てくるものですが、自分たちが支払った保険料に対して、そのもらえる年金の総額に世代ごとに格差があることです。要するに、今の60代は払った額に対して4倍の年金をもらえるのに、今の20代は払った額の2倍の年金しかもらえない(可能性が高い)ということです。

世代間格差の議論は色々巻き起こっていて、経済学者がいたるところで論じている話題でもあり世間的な関心度も高いと思います。しかし、この問題は結局感情論にしか終始しないと思っていました。なぜなら、日本は1970年代とか1980年代と比べて、人口も減少していくに決まっていますし、GDPも確実に下がっていくことが目に見えているからです。そんな状況下で、もらえる年金の総額が増える(あるいは、上の世代と同じくらいもらえるようになる)なんてことはありえません。ありえない話を望むとき、どうしても私怨以上のものは生まれなくなります。だから、感情論にしかならないのです。

この世代間格差を考えることは、経済学者の飯の種にはなるかもしれませんが、私たちのような一般人が毎日ウンウンと考えていてもどうしようもない話なのです。

出口さんも、本書の中で「世代間格差は諦めよう」という話をしています。「大切なのは、できないことを考えないこと。つまり『解』にならない悩みは捨ててしまう、ということです」と言っています。まったくそのとおりだと思います。私たちのような個人が世代間格差をいくら考えたって、解決しようがありませんので。厚労省などに務めている、ということであれば別ですが・・・。

2. 大切なのは「調査」と「比較」

世代間格差に象徴されるように、今の若い人は私たちの上の世代の人たちの若いころと比べて、相対的に収入が少ないです。世の中の人たちは、若者の○○離れと言って若者に「もっとお金を使え」と煽りますが、なんせ使う元手がないのですから、そのような贅沢品にお金を使っている余裕がありません。

私の同期など、周りの人たちもそうなのですが、みんな「いかに安いものを買うか」ということに腐心しています。みんな節約して貯蓄しています。そのような中で問題になってくるのが、「倹約しつつ上手に物を買うためにはどうすればよいか?」ということです。これに関して、この本では少し話が出てきます。

物を上手に買うためには、「調査」と「比較」が大切だと言います。節約して貯金をするためには、少しでも物を安く買う必要がありますが、その際に重要になってくるのが「調査」と「比較」。「同一商品や同一サービスは、比較して価格の安い方を選ぶ」が鉄則です。当たり前の話なのですが、意外にやっていない方も多いのではないでしょうか。私も時々やらずに後悔することがあります。「しあわせにつながらない消費すなわち浪費は、できるだけ削っていきましょう」です。

3. 独身のうちから生命保険に入るべきか?

倹約・節約するうちに気になってくるのが「固定費」の問題です。ファイナンシャルプランナーにくる相談の中でも、特に「固定費の削減」というテーマは大きなテーマになっているそうです。固定費を削るために考えられるのは、電気代、水道代をはじめとする光熱費や、ネット料金など・・・。しかし、光熱費を削るにも限界がありますし、ネット料金などの通信費は、格安SIMなどを強引に使わないかぎり、どこの会社と契約しても大きくは変わらないです。

ところで、固定費の中には将来のために重要なお金も含まれます。それが「保険料」です。そして、保険料の見直しもまた、ファイナンシャルプランナーに多い相談のひとつだそうです。保険に入るなら少しでも安い保険がいい。そう誰もが考えるはずです。

生命保険は一般には結構な額です。私も生命保険の営業を受けてから調べてみましたが、1万〜2万程度してしまいます。住民税より高いのです。手取りが30万円にも満たないのに、そこまで大きな額を払うとなると、飲み会や旅行を何回も我慢しなければならなくなります。そんな人生、少し嫌だなと個人的には思います。若いころの方が、体力も気力もあります。その若いうちに、人生を楽しんでおきたい。そう思うのは自然な発想です。

日本では若いうちから生命保険に入っておく、というのがある種の人生のロードマップみたくなっている節がありますが、ヨーロッパなどではそうではないようです。ヨーロッパなどでは、どちらかというと「就業不能保険」の方が、若いうちに入る保険としてはメジャーなのだそう。生命保険の営業マンに就業不能保険のことを聞いたら、「なんですかそれ?」と言われてしまいました。トホホ。そのくらい、日本では知られていない保険、ということです。

就業不能保険というのは要するに働けなくなったときのための保険だそうで、一時的に休業が必要となった段階から毎月一定の額が支払われるそう。調べてみたところ、月に15万〜20万くらいの収入を保証してくれる保険だそうです。生命保険ほど手厚いわけではありませんし、「自分が働けなくなった場合」を限定的に想定した保険ですから、家族がいないうちにしか使えません。しかし、独身であるうちはこれで十分、と考えることもできます。月額3000円程度のものがほとんどで、とても合理的な保険です。

結論: 貯金をしながら自分の好きなものにお金を使うために

日本人の美徳として、とにかく貯金をしろ!結婚しても、子供が生まれても、子供が巣立っても、貯金をしろ!マイホームを買って、自動車を買うために!というものがあります。しかし、それはこれからの時代も通じるかというと、そうでもないと私は思います。

ダーウィンの進化論などを見てもわかるように、これからの時代を賢く生きるために重要なことは、とにかく変化に柔軟に対応できるようにする、ということでしょう。そういう生物がこれまでも生き残ってきました。「適応」こそが、これからの時代の美徳となるべきものです。

変化に柔軟に対応できる家計をもつためには、どうすればよいでしょうか?ひとつは変動費を増やすことです。逆に言えば、固定費をできるだけ削っておくことです。変動費はその名の通り変動させられます。したがって、自分のコントロール下に置きやすいです。あらゆる契約を行う際に、「柔軟性がどれくらいあるか?」を考慮すべき、ということです。

そして固定費を削るためには、お金に関する知識が必要不可欠になってきます。お金に関する知識を増やすとは、たとえば保険に関して言えば先ほど書きましたとおり、「生命保険」一択に見える保険も実は、ライフサイクルのフェーズごとに使い分けができることを知るなどといったことです。要するに、「調査」と「比較」を丁寧に行うということでしょう。必要のない時期に無駄なお金を消費しない、ということです。

一方で、生命保険には安心料の側面もあります。貯蓄型であれば、その会社が潰れないかぎりは満期でお金が返ってきます。掛け捨てではそれがないため、少し不安になります。柔軟性を高めるということは、リスクの高さを受け入れるということでもあります。ボラティリティの高いマーケットほど、より儲かる確率も損する確率も高まるのと同じことです。

もっとも、「変化に対応できる未来型の柔軟な家計」と「これまでの日本人がやってきた一般的な家計」のどちらがよりリスクが少ないか、というのは神のみぞ知る話です。日本で突然資源が取れ始めて、日本が急成長する可能性もなきにしもあらずです。それこそ、「大切なのは、できないことを考えないこと。つまり『解』にならない悩みは捨ててしまう、ということです」なのかもしれません。

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