『聞くだけで自律神経が整うCDブック』という本
いや、単に気になっただけである。怪しい、とかそういうことは思っていない。口コミ評判で上々そうだったので買ってみた次第。使ってみた効果については、今のところよくわからない。
私個人としては、著者の小林弘幸氏にはいくつか質問がある。
まず『聞くだけで自律神経が整うCDブック』の前提についてだが、おそらくあまり難しいことは考えたくないお茶の間の主婦あたりがターゲットなのだろう。したがって、普通の人がこの本を読んだ際に下記のような疑義が生まれてしまうのは致し方ないように思う。なぜなら、医学的根拠などを正確に説明し、それによって『聞くだけで自律神経が整うCDブック』が厚くなりすぎると、お茶の間の主婦には手にとってもらえなくなるからだ。そこは了解している。
その上で、あえて下記の質問をしてみたい。
『聞くだけで自律神経が整うCDブック』のモニター実験結果について
- 16ページから19ページにかけて、口コミ効果みたいな「モニター実験結果」なるものが示され、20ページにおいて「どうですか?このCDの効果を実感してもらえましたか?」という流れになっているけれど、さすがに「おいおい」と口にせざるを得ない。このあたり、どうなってるんでしょう?論拠となる論文とかあればぜひ読みたいところ。(個人的には、実験に際しいろいろモニターの条件を揃えたと思うんだけど、その条件とやらがとても気になる)
『聞くだけで自律神経が整うCDブック』に頻繁に登場する「医学的根拠」という言葉について
まず、「医学的根拠がある」とは、「学会で認められた論文がどこかしらに公開されていること」と定める。要は、論文になってるかどうかだ。
「このCDは医学的根拠をもとにしたオリジナルCD」と32ページにあるけれど、その「医学的根拠」を知りたい。論文ください。あと、1日10分聞くもよし、1日中流すもよし、っていうのはなぜなんだろう?10分流したときと1日中流した時の効果が変わらないんであれば、1曲(約3分)聞くだけでも効果があるってことだよね?その辺の実証結果はあるんでしょうか?論文ください。
「ヒーリング音楽とは違います。なぜなら、医学的根拠にもとづいて作られているからです。」と36ページにあるけれど、この「医学的根拠」とは。ヒーリング音楽との違いのところで、次頁にていろいろ記述があるけれど、これは「『聞くだけで自律神経が整うCDブック』のCD」でなければならない理由にはなりきらない。なぜなら、ヒーリング音楽においても同様の「繰り返し」みたいなものは存在するように思われるからだ。また、ヒーリング音楽否定の理由が「自律神経を整えることを目的に作られていないから」ということになっている。これは消極的な理由であって、もう少し積極的な理由がほしい。論文ください。
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ここからはあえて、『聞くだけで自律神経が整うCDブック』のCDの役割を好意的に捉える。おそらく「呼吸を整える」ところを主眼において作られている可能性はあるかなと思っている。本の後ろの方にも、呼吸に関する話が出てくる。呼吸を整えるというのは自律神経の調整には結構重要な要素で、たとえば座禅とか瞑想が自律神経の調整に効くのは結局、呼吸を整えるからとよく聞く。
だから、たとえばこのシリーズで「塗り絵」なんかも出てるみたいだけど、塗り絵も呼吸が整うよう設計された塗り絵なら当然効果がある。究極、呼吸の整う小説みたいなやつを出版しても自律神経に効くって言えるかもしれない。(そんなに「自律神経学会」が甘くないことを願うけれど)。
まあでも、この論理が正しいとすると、わざわざCDを聞かなくても、呼吸さえ整えれば自律神経の復調には大きな貢献をするのではないだろうか。その点、「普通にYouTubeで拾えるヒーリング音楽」との差異がイマイチよくわからない。
だからこそ、なぜ、この音楽たちである必要があったのか、その論拠を知りたいなと単純に思った次第である。論文を探してもどこにもなかったので、ぜひください。(検索したけど、CiNiiにしかないというオチはあったけれど、なんとか読んでみたい次第。)
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余談になるけれど、医学的根拠ってやつは、ほんとうに慎重に見定める必要があると思っている。医学というのは、どうしても一般の人には馴染みのない分野だから、騙されやすいといえば、騙されやすい。しかも、わりと勉強しづらい(っていうか、そういう本高いし、どこから手をつけたらいいかほんとによくわからない)。で、気づかぬ間に法外な金をとられることもある。
これは金融業界の人間だから思うこと、なのかもしれない。結局、こういう素人がなかなか近づきづらい業界というのは、知識のある方がどうしても優位になってしまう。素人ができることは、こうやって論理の欠陥と思しき箇所をチクチク刺して、自分で疑義を解消していくことくらいしかないのだ。
一方で、素人が医学的根拠に関してあまり口を突っ込まないほうがいいこともあると思う。結局、臨床こそ根幹であって(私の勝手なイメージ)、それをしていない素人がいくら頭で考えて医者に突っかかったとしても、「で?」という話になるのは当然だからだ。論文にはなっていないけれど、多くの人に施術してみた結果、こう言えそう、ということが山程あるかもしれないからだ。
まあその辺を考慮して、それでもこの本の効果を信じるというのであれば、それはそれでいいんじゃないかと思う。口コミで結構「効果がある」みたいな感じで広まっているのは事実。
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追記:20160508
この手の本が気になって、本屋の家庭医学コーナーに足を運んでみたけど、ゴミの宝庫優秀な医学的根拠を持つ本の宝庫でした。万華鏡を使って健康を維持しようぜ!万華鏡はヨーロッパで生まれたんだぜ!データはこんな感じだぜ!(どうやって被験者を興奮状態にし、沈静化させたのか一切書いてないぜ!それって、ただたんに時間が経っただけなんじゃないか!)みたいな感じの本までありました。あとは、変な棒を使って視力回復しちゃうぜ!っていう本まで・・・