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気まぐれに書評とか。

年末年始は塩野七生

せっかちなWebの読者のために、先に結論を伝えたい。この本はおもしろい。ただし、世界史にある程度触れていなければ、楽しむことはできないだろう。「アテネ」「スパルタ」の言葉に「あぁ、あれね」と反応できなければ、この本は結構難しい。

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塩野七生の新刊が出ているのを年末に発見し、読んでしまった。以前は古代ローマを扱った塩野さんだったが、今度は古代ギリシアを扱うという。

学生時代、古代ギリシアに関する話に結構触れる機会があった。ゼミでプラトンアリストテレスを徹底的に読み、その中でギリシアの文化についてもそれなりに触れた。『イリアス』『オデュッセイア』『オイディプス王』など、古代ギリシアの伝説的で現代にも受け継がれる名作を、自主的に一通り読んでみた。それくらい古代ギリシアは好きだ。

本書はまるでミステリーを解き明かしていくかのようにストーリーが進む。塩野さんはとにかく伏線を張るのがうまいと思う。「スパルタはとにかく機動力がない、なぜなら・・・」という話は、前半すぐに出てきて、本書の中でその後、スパルタの行動原理を示す物として何度も登場することになる。

伏線は効果的に張られることで、読者の理解をより助けることになる。

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『300』という映画を見たことがあるだろうか。見たことがない方は、一度見てみてほしい、と思うくらいすばらしい映画である。あそこには男の理想の生き様が凝縮されている。とにかくカッコいいのだ。そして、その『300』で扱われた古代ギリシアの戦争が、本書でも登場する「テルモピュライの戦い」である。

テルモピュライの戦い」は、欧米人に「古代ギリシアの戦いと言えば・・・」と問うと必ずそう返ってくる戦いの一つである(ほかには、「マラソン」の語源となった、「マラトンの戦い」があるらしい)。アケメネス朝ペルシアを相手に、ギリシア連合軍が戦いを挑む。最終的にこの戦いでギリシア連合軍(最後まで戦場に残ったのはスパルタだった)は負けることになるが、その負け方が「玉砕」であったが故に、英雄的な悲劇として今でも語り継がれている。

『300』は、その300人のスパルタ兵士が玉砕する様を、できる限り美しく豪快に描ききった傑作の映画である。

本書でも当然、テルモピュライの戦いは触れられる。そこで、塩野さんは彼女自身の真骨頂と時に言われる戦闘描写を行う。これがとても臨場感のあるもので、僕はページをめくる手がとまらなかった。

この戦闘シーンはおそらくヘロドトスを中心に文献を丁寧に調べ上げ、著述していると思う。文献を丁寧に読みつないで、それをわかりやすいストーリーに変えきってしまう力は、一生身につけられない力だろうな、と思わざるを得ない。

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ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

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