『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル』
ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/08/30
- メディア: 文庫
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カエサルは高校時代の世界史が最初の出会いだろうか。高校教師がカエサルについて話したという記憶はない。学校の先生というのは、個人的には知識が浅くてイマイチ、という印象がある。しかし、浪人時代の予備校教師が話してくれたカエサルの話は今でも覚えている。
思えば、僕は高校くらいまではほとんど本を読まない人間だった。年間で1冊読むか読まないかのレベルだったと思う。学校の勉強は仕方なくでやっていた記憶がある。だが、今のように自ら興味のある分野を自分で見つけ、自分で学ぶようになったのは、やはり浪人時代の予備校教師のおかげだったと思う。とくに、英語と世界史の先生が記憶に残っている。
横道にそれるが、私は高校時代くらいまで「知的好奇心」を刺激してくれる人間に出会わなかったなと思う。だから先生に対してはあまりいい印象を持っていない。どちらかというと薄い知識しか持っていない凡人、というのが教員に対する個人的なイメージだ。
で、その世界史の先生はローマ史が専門で、本人も「話しだすと半年くらいは授業できる」と言っているくらいだった。そんな彼が、海賊に襲われた時のカエサルの話をしてくれたことを今でも覚えている。また、クラッススがカエサルのATMだった、というような話も覚えている。
そんな話が満載の、塩野七生のカエサル本だった。まだ上巻しか読んでいないので、上巻に関する感想を少しだけ。
まず、カエサルの幼少期〜青年期に触れている本はこの本くらいなのではないだろうか。多くの本は、カエサルが頭角を現し始めたときくらいからを描いている。だから、カエサルは早熟の天才だったのでは、という勘違いをしがちだ。
本書を読んでみるとそれはどうやら見当違いだということがわかる。カエサルは早熟ではなかった。40歳までは、チャンスに恵まれずに出世もしていなかった。しかし、40歳になって頭角を現すことに成功した。そういうチャンスを掴む際はまず、カエサルにあったといって差し支えないだろう。
しかし私はそれ以上にカエサルには重要な事実があったと思った。それは、カエサルはキケロが認めるほどの読書家だった、という事実だ。当時の本はパピルスでできていたからとても高価で、カエサルは本の読み過ぎが原因で借金を抱えることになる(それ以外には、服と女で借金を重ねる)。それくらい、若いころに大量に本を読み込んでいたのがカエサルだった。
カエサルが読書家だったという事実はあまり知られていないし、カエサルの読書に関しては、詳細がないせいか塩野はサラッと流している。僕はカエサルの出世の原動力はこの読書で身につけた知力にあったと思う。
だから、40歳になってチャンスが巡ってきた際、自分がどう振る舞うべきか、どういった戦略をもとに出世すべきかを考えることができたのではないだろうか。カエサルは、若いころの読書貯金によって、20数年後に力を発揮することができた。
やはり歴史上の偉大な人物というのは往々にして読書家だったし、若い頃からコツコツと続けてきた努力が後年になって実を結ぶというのも往々にしてある話だ。だから、今仮に力を発揮できていない、不遇を受けていると思っているとしても、今の努力は決して無駄ではないと考えるべきだろう。それは、歴史の多くの偉人が証明していることなのだから。