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気まぐれに書評とか。

『HHhH プラハ、1942年』

HHhH (プラハ、1942年)

HHhH (プラハ、1942年)

会社のロサンゼルス研修が終わり、帰国。日本は暑い。ロサンゼルスは日中28度くらいになるのだけど、湿気が全くないので、日本でいうところの5月くらいの気温=ロスの夏といった感じだ。

ロサンゼルスというのはもともと砂漠だったそうで、したがって日中と夜間の気温差が激しい。夜は寒く、半袖のスポーツ用Tシャツ1枚で寝ていると風邪を引く(そして、案の定今、引いている)。なぜアメリカ人はそんな砂漠の真上に木を植えて町を作ったのか、と思ったけれど、カリフォルニアには昔ゴールドラッシュがあった。そうして、カリフォルニア州は発展した。

街の歴史というのは調べてみると結構おもしろい。アメリカだとせいぜい300年くらいの歴史しかないけれど、ヨーロッパだと1000年とかそういうレベルで街が歴史を持っている。日本も同様だ。

プラハという街にはいったことがないけれど、そこで第二次世界大戦中に悲惨な歴史があったことは容易に想像がつくだろう。だが、歴史の教科書にはまったく出てこない歴史がそこにはあった。

私も知らなかったのだけど、ナチのNo.2だったラインハルト・ハインリヒなる人物が、そこで暗殺されるという歴史的大事件が起きていたのだった。本書はそんな、ハインリヒ暗殺事件について史実をもとに詳細に書き上げた一冊。

この物語の主要な登場人物は、ハインリヒ、クビシュ、そしてガブチークという人物だ。歴史の教科書には登場しない人物だけれど、後ろ2人はじつは、チェコでは英雄だったりする。2人は「パラシュート隊」なる秘密のレジスタンスに属していて、ハインリヒを暗殺することに成功する。

ところで、本書で一番1シーンあたりに使われている段落数が長いのが暗殺シーンなわけだが、この暗殺シーンがまた、人間臭くてとてもおもしろい。詳しくは読んでみてのお楽しみ、ということで(Wikipediaで予習もできる)。

この小説、読んでみるとわかるけれど、著者の独り言がとても痛快だ。史実に基づく小説なのだけど、著者がその文章を書いている気持ちをところどころ出してくるのがとてもおもしろい。たとえば、このシーンを書くのはとても不安だった、とか、一般にはこういわれているけどね、といった案配だ。

著者はフランス人。フランス人といえば、よく「おフランス的表現」なんていわれるけれど、そのおフランス的表現がとても小説にマッチしている。ああでもない、こうでもないと断定しない感じがまた、歴史に対する著者の謙虚な姿勢を表していると感じ、私はとても好感をもった。

最後に、なぜ本書のタイトルがこうなのか。「Himmlers Hirms heiβt Heinrich」という言葉の略語だが、ドイツ語でこれは「ヒムラーの頭脳はハインリヒと言う」くらいの意味。heiβtって久々に聞いたな、大学のドイツ語の授業以来という感じ。なのだけど、本書の114ページにタイトルの意味に関する秘密もちゃんとカバーされている。

ロサンゼルスの寮のベッドで夢中になって読みふけった。ロスのとてもいい思い出になった。

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