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気まぐれに書評とか。

『正しい判断は、最初の3秒で決まる』

本屋で見かけてからずっと読みたいと思っていた本だったけど、お金がなかったので新品では買わなかった。先週、秋葉原ブックオフにいったらものすごく安い値段で売っていた。即買った。最近はブックオフにお世話になりすぎている気がする。社会人1年目、初任給まではガマンか。いや、たとえ給料がコンスタントに入るようになったとしても、ブックオフで本を買うだろうけど…。

前置きが長くなったが、この本は「直感」を論理的・理論的に説明しようという目的で書かれた本だ。結果はどうだったか。まずまずうまくいっているのではないだろうか。少し、ほかの思想家に頼りすぎていて、ショーペンハウエルのいうところの「他人の頭で考えている」状態から抜け出せていないのではないかというツッコミを入れたくなる箇所がいくつかある。しかしそれでも、私にはこんなに理論的かつ論理的にも深みのある文章は書けない。

直感というのは最近つくづく大事だと思っている。私は今、実際にシミュレーション上でトレーディングを行っていて、その中で実際に投資を行っている。その中で思うことはやはり、人間最後は直感なのだということだ。プロのトレーダーは直感と感性で投資を行っている。もちろん、マーケットを開く直前に戦略を練るのは当たり前だ。その上で、直感と感性で投資を行い、実際に収益をあげる。

トレーダーはよくゲン担ぎをする、なんてこの本には書いてあるけれど、これは本当だ。私が今教えてもらっているトレーダーいわく、お賽銭はきちんと1万円入れるし、お祈りする際も余計なことはお願いせず、ただ「俺にちょっかいを出さないでください」とお願いするそうだ(笑)。トレーダーとしてすさまじい成果を上げている人ほど、そういう傾向にあるんだと思う。なんだかんだ、最後は神頼み、直感頼みなのだ。

そういった点で、本書の主張は実体験としても同感できるところが多い。

本書では、一貫して直感というのは経験によって育てられるという。これはそのとおりだと思う。人は経験のないことにかんして「直感」で判断を下すことはできない。多くの人が、この点については納得していただけるだろうと思う。

私の経験で言うと、たとえばHTMLに関しては、もうコードをちょっと眺めただけで論理的に明快に書かれているかどうかわかるし、それに付随するCSSも、無駄がどこにあるのかというのを、コードをサラッと読んだだけでわかる。これは、過去に何度も何度もコードを読んできたし、自分で実際に美しいコードは何かを追究して書くようにしていたからこそできる賜物だろう。

しかし、これが別のプログラミング言語となると話は全く違う。Cのコードをサラッと読んだだけでは、残念ながら論理的かつ効率的なプログラムが組まれているかどうかわからない。なぜなら、私はC言語に関しては基本的な文法を知っているにすぎず、HTMLほどの経験をまだ積んではいないからだ。

スポーツでも同様だろう。テニスだと、最初は相手の打った球が飛んでくるかさっぱりわからないし、前なのか後ろなのかわからず、余計な動きをして体力を消耗してしまう。しかし、3ヶ月、4ヶ月と経験を積むうちに、どこにボールが落ちそうかが瞬時にわかってくる。経験によって、弾道が読めるようになってくるからだ。脳は、実際に身体を動かしながら、無数の情報を経験として蓄積している。その経験の賜物が、直感となるのだ。こうして人は、上手にボールに反応できるようになる。

では、どのように経験を育てるべきだろうか。本書では、「結節点になっている分野を学べ!」という。具体的に行くと、スポーツならばランニングだ。なぜなら、スポーツをする上で「走る」という行為は、どのスポーツにも共通して必要な行為だからだ。

学術でいくと、結節点は「教養」となる。教養については具体的には定義されてはいなかったが、通例でいくと「リベラルアーツ」が該当するだろう。歴史や哲学、数学や論理学、さらには美術や音楽が、結節点になりうる。これをやるために私たちが行うべき実践は何か?それは読書だろう。だから、読書は大事。

上記に加えて、私が個人的に社会人になってから大事だと思うのが、時間の質である。社会人ともなると、10年目の社員と1年目の社員とでは圧倒的な差がある。これは自覚しなければならない。なぜ、10年目と1年目とではこんなにも差があるのか。それは、経験の違いだ。どうしても、仕事をしながら積み上げてきた時間に差があるのだ。ゆえに、10年目と1年目とではあまりにも差が開いてしまう。

しかし、1年目と2年目ともなってくると、違いはせいぜい1年という時間である。1年の経験の差であれば、1年目でもなんとか追いつくことはできると思う。ただ、追いつくためには普通のことをしていてはダメだ。何をするか。時間の質を高めるのだ。

だが、時間の質を高めるにはどうすればよいかーーこれは私もいまだにわからない。PDCAサイクルを上手に回すことに肝がありそうだと直感しているけれど、果たしてこれで追いつけるのかは謎だ。この点を、今後は突き詰めて考えてみたいと、本書を読みながら思った。