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気まぐれに書評とか。

『ファウスト』byゲーテ

ゲーテを読んでいる。『若きウェルテルの悩み』は、2年前くらいに読んだ。しかし、ゲーテの感情を理解することができなかった。ついで、『ファウスト』も今読んでいる。第一部が終わった。しかし、ゲーテの感情を理解することができなかった。

「よくわからない」という言葉がまさに当てはまる。大学に入ってから哲学をやってきたので、「わからない」に対する耐性は強いほうだ。だから、別に読了を諦めてしまいそうになっているわけではない。だが、ファウストは今のところ「よくわからない」のだ。

このわからなさというのは、「文章は読めているし表現もすくい取れており、進行も把握できている」けれど、「全体として何をいわんとしているかがわからない」のわからなさである。このパターンは、自分よりもかなり頭のいい人が話を自分のペースではじめたときに起こりやすい。その、わからなさ。

ゲーテは、IQが推定で210あったという。IQというのは、思考を抽象的に把握する能力の高低だ。つまり、ゲーテは高度に抽象的な思考を行い、それをわずか3次元しかもたない文章という形式に落とし込んだ上でさらに、文章から細部を荒削りした詩という形式に落としこんでいる。これこそ、天才の所業であり、さらに詩という形式が邪魔をして、私たちがファウストを読むことを困難にしている。

いや、もしかすると私がバカなだけなのかもしれない。

まだ一部なので、一部の簡単なあらすじを書くと、「ファウスト」という博士が、「メフィスト」という悪魔にそそのかされてあれこれやるお話だ。というか、メフィストファウストをそそのかせるかを試したというのが精確だろうか。

そしてその後、ある女性に恋をする。その際、悪魔に頼ってさまざまな誘惑と偶然をしかけ、見事娘を手に入れる(というと、ジェンダー論者が怒り出すか)。娘を手にするものの…というのが、第一部のあらまし。

時代背景などをしっかり理解しつつ読むと、より楽しめると思う。個人的には、なかなか知らない単語が多く、情景を頭に思い浮かべることに苦労した。

ファウストはどんな人なのか。私は青年期によくある理想を追い続ける人のような印象を受ける。おそらく、かなり長いことアカデミックの世界にいたのだろう、かなりの世間知らずなのも間違いなさそうだ。現実とあまり向き合わなかったためか。いざ美女を目の前にした時に悪魔に頼ってしまう。結局自分のものにすることができたが、しかし一部の終盤ではあまりいい終わり方をしていなかった。

もちろん、ファウストがどんな人に映るかは読む人によって変わるだろう。そこがまた、ゲーテという天才のなせる業だと思う。

ファウストは、ゲーテが60年をかけて完成させた大作だ。その大作を、わずか数時間で読み、理解せよという方が難しいのかもしれない。これは直感だが、読む時期や年齢によって感じ方の違う作品になるだろうと確信している。二部も楽しみだ。

ファウスト〈1〉 (新潮文庫)

ファウスト〈1〉 (新潮文庫)