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気まぐれに書評とか。

ドラッカーの『マネジメント』の肝!=目標設定と事業の成功

ドラッカーの思想の肝は、「目標設定の仕方」と「事業の成功のために必要な要素」を考えることにあるのではないか。そう、『ドラッカーが『マネジメント』で一番伝えたかったこと』という本から学びました。今後、もっと注目されるであろう彼の思想を読み砕く一冊!その書評をさせていただきました。

 『ドラッカーが『マネジメント』でいちばん伝えたかったこと』(小宮一慶)を読みました。原著については正直「目を通したことがある」というレベルでした。『プロフェッショナルの条件』は、昔知り合いに薦められて読んだのですが。その時から、「言ってることがわかりやすいなあ」と思っていました。

 しかし、今回小宮さんの著書を読んで、より彼の言っていることはビジネスの核心をついているのではないかと思えるようになってきました。経営学ではほとんど相手にされない彼ですが*1、実業界では絶大な指示を誇っていると思います。なぜかというに、それはビジネスの核心をついているからなのでしょう。

ドラッカー流、企業の目標設定の仕方

イノベーション目標」と「マーケティング目標」

 彼が『マネジメント』で伝えたかったのは、経営目標には「マーケティング目標」と「イノベーション目標」が設定されているべきということ。そして、マーケティング目標には必ず「社会から必要とされているか(クライアントの役に立っているか)」を盛り込む必要があるということだと考えました。

 マーケティング目標というのは、要するに顧客が何を求めているか、あるいは社会が何を求めているかを徹底的に考え、それを下に事業を定義して戦略を立てる、という風に言い換えられると思います。これはドラッカーが『マネジメント』の中で提唱しただけではなく、マーケティングのお偉いさんであるT.レヴィットという人も、マーケティングという言葉の定義の中でおっしゃっていたように思います。

 イノベーション目標というのは、現在の会社の事業がどうあるべきかということだけでなく、未来に会社の事業はどうあるべきか、ということを指すようです。顧客が何を求めるようになっているかを予測し、それに基づいて現在の事業内容や組織を変えていくというプロセスを行うことを、イノベーション目標といいます。

 企業が目標を立てる際にはこれら2つの目標が必ず設定されている必要があります。企業が目標を立てる際のコツは、「マーケティング目標」と「イノベーション目標」を同時に立てるというところにあるんだと、彼は言いたかったのでしょう。

 もちろん目標設定の際には当然、SMARTの法則などに基づく「わかりやすく具体的な」目標が設定されているべきだということも盛り込まれています。目標設定のためには当たり前のことではありますが、今一度見直すべきポイントではないかと思いました。

使命感に燃えよ、それが成功の秘訣だ

企業は社会とは切っても切れない関係にあり、それを自覚できなければ成功はムリ

 企業は社会とは切っても切れない関係にあるということを、小宮さんは何度も何度も著書の中でおっしゃっています。ドラッカーもまた、僕のイメージではそういう話を強くしていた人、というイメージがあります。それが成功の秘訣だと。

 しかし、それを思っているだけではダメで、彼は再三「企業が成功するためには(失敗しないためには)、企業の目的が大事だ」と著書の中で訴えています。つぎの一節も、それに関連するものです。

企業の目的としての事業が十分に検討されていないことが、企業の挫折や失敗の最大の原因である。

『マネジメント』(P.F.ドラッカー)

 ただ、小宮さんの著書の中では、その目的は「利益」であってはならないと考えている、として書かれています。社会にとってどういういい影響を与えられるかが目的であるべきだと。そのとおりだと思います。なぜなら、企業と社会は、お互いが協力しなければ会社が成功できないからです。マーケティングでもPEST分析なるものがありますよね。

 そして、成功とは黒字のこと、さらにいうと社会に対してよい変革をもたらすような革新性を生み出したら、企業は成功していると呼べるのだと思います。一方で赤字を出してしまっては、社会に損失を与えていることになりかねません。なぜなら、企業活動は社会からいただいた資源を元手に行うもので、それを使ってなお資源を減らしてしまったということであれば、許される事態ではありませんね。

 繰り返しになりますが、社会とのつきあいかた、社会に対する目線を忘れてしまうと、事業は成功できなくなる。このことを忘れないようにしたいと思いました。

今回紹介した書籍

 

*1:これがなぜかはよくわかりませんが、その思想は結構断片的な側面があり、それが「理論を愛する」経営学者たちには合わなかったのではないでしょうか。僕自身は、経営は「理論」ではなくて「問題解決の連続」だと思っていて、事実の認識をし、それを積み上げることではじめて成り立つもので、したがって、理論はあとづけにすぎないと考えているのですが。