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気まぐれに書評とか。

日本的「ポール・ゴーギャン」―『(日本人)』

 橘玲の『(日本人)』という本を読みました。橘玲さん自体はよく文春をはじめとする雑誌に寄稿しているなあというイメージしかもっていなかったが、本書を読んで橘さんの主義主張がよくわかりました。彼はリバタリアンでした。

 この本は2012年時点での考察ですから、若干話しが古いのは言うまでもないです。しかし、それはおおまかな本書の流れとは関係がありません。あくまで本質は、日本人の根本にある性格(それは武士道などではない)を解き明かし、これからの日本人が向かう先を提示しようという壮大な計画そのものです。

 『(日本人)』と橘玲の試みは、そういった意味で「日本のポール・ゴーギャン」なのかもしれません。彼が、『われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこへ行くのか』という絵画を書いて人類の本質を知ろうとしたのと同様に、です。

 本書のスタートは、日本人とタイ人の行動がよく似ていて、「遠慮」や「付和雷同」といった、これまで日本人特有と考えられてきた気質が、実はアジアに共通するものにすぎなかったという衝撃的な主張から始まります。これは、旧来の日本人像を崩してくれるでしょうし、僕のように日本では生きづらささえ感じる人たちにとっては、立ち位置をハッキリさせてくれて嬉しいと歓迎さえできるでしょう。

 日本人の「美徳」と呼ばれる気質は、実はアジアにありふれたものだった。では、日本人に特有の気質とは?。本書はこの問に対して「日本人的なものとは、よくいわれる”世間”(ムラ社会)ではなく、”世俗”(神を信じずに功利的に生きる)の方にある」と喝破します。

 あの戦争も、「したほうが合理的だったから」始まったし、戦争後にマッカーサーに翻った日本人が多かったのも、「そうした方が合理的だったから」そうしたのでした。そういえば、日本に勧善懲悪の時代劇が多いのも、悪は懲らしめたほうが合理的だからウケるのだし、悪を懲らしめる合理性に賛同するのも合理的だから、みんな好き好んで見るのでしょう。

 ここまでで、日本人が「何者か」はある程度わかったと思います。では、「日本人はこれからどこに行くのか?」

 これに橘玲は、イングルハートの価値マップなるものを使って答えます。

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http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9458.html

 このマップは、一言でいうと「その国民がどういう考え方を持っているのか」を示したマップなのだそうです。僕はこのマップを初めてみたので、まだまだ勉強不足ではありますが。

 これを見ると、日本の立ち位置がほかよりもかなり際立っていることがわかるのではないでしょうか。世俗的指数が異様に高く、自己表現をあまり行わない民族であることがわかります。

 このマップを使い、本書では、このマップの右上こそが、今後日本人の目指すべきユートピアであると示しました。つまり、世俗的指数が高く、自己表現的価値も高いエリアを目指すべきだ、ということです。そして、日本人にはここに行くための資質があると。

 僕自信も日本人の合理性には結構納得の行く部分があって、というのも、今の若者ってかなり合理的な思考をするようになってると思うんですよね。自分の身の丈に合わないことには挑戦しないというのは、自分を守るために合理的です。逆に、周りに流されるように見えるのもまた、彼らが合理的な判断をしているからそう見えるんでしょうね。さらに、色々若者も決断すると思うんですけど、理由を聞いてみるとかなり筋が通っていて合理的だったりする。

 日本人って、合理的なんですね。

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