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プレイヤとマネージャは頭を切り替えなければならない

 この前、「団体に入ってよかったことってある?」という質問があって、「ない」と答えてしまったんだけど、よく考えたらあった。僕はあまのじゃくみたいな性格をしているから、一言でまとめきれなければそれは「ない」に等しいものとして「ない」と答えてしまう癖があります。

 それはおいておいて、最近、入ってよかったなと思うことがあるとすれば、マネジメントは非常に難しいということを肌で体感できることだろうと思っています。もちろん、そこらの学生団体に所属する人たちでもそれは身をもって体感していることだと思うのですが。そう、マネジメントは難しいのです。というか、簡単だった試しがない。

 マネジメントには方程式がないですよね。仮に回帰分析のような一本の線形に表せたとしても、変数があまりに多すぎるから、きれいに対処する方法が存在しません。経営学という学問領域もあるけれど、学んでいる個人的な感想としては、あれはヒューリスティクスでしかないと思います。やはり現場の最前線で戦うと全く異なる。このように、理論がないのです。

 なぜ理論や方程式が存在しないのかというと、構成要素に「不合理なヒト」が入ってきてしまうからだと思います。合理的に行動すれば、みな同じような動きをしますから、案外容易にチームや組織をまとめあげることができるかもしれません。しかし、そうではないというのが実情です。不合理と言い表したのは、そこに「感情」が介するという意味です。理性の対立軸としての感情――これらが介する限り、人は決して合理的には動きません。

 したがって、マネジメントにおいては「感情」への対処がもっとも重要な課題になるかと思います。感情というものには本当にさまざまなものが含まれます。モチベーション、人間関係、リーダーについて行きたいと思うかetc。そしてその感情がマネジメントを支配している限り、問題が起こらないはずがないのです。なぜなら、感情は主観の集合であり、主観と主観が集まるとそれらは衝突するからです。

 そしてその衝突を調停するのがマネジメントなのかもしれません。逆に言うと、それ以上の役割はマネジメントにはない。言ってしまえば官僚のように組織を円滑に運営・管理することに力を注ぐべきなのがマネジメントの仕事なのだろう、と。

 ところで、今回のタイトルにも書きましたが、プレイヤとマネージャは頭を完全に切り替えなければなりません。プレイヤは自分軸や主観軸でも十分やっていけます。自分の成果を最大化すればよいのですから、当然変数も少ないですし、何よりも自分の感情をコントロールできればそれで終了なので、難しいことは何もないです。精神論だって、自分には通用します。

 しかし、マネージャになったとたん、見えてくる景色は一変します。マネージャは、自分の感情に加えて、他人の感情までも見なければなりません。それも、幾人もの感情の機微を見なければならなくなります。これは非常に難しい。人間は、他人とは根本的にわかりあえない存在だからです。わかりあえないもの同士を最適化しなければならないのが、マネージャの役割ですね。

 このことに気づかないと、プレイヤとして優秀だったとしてもマネージャになったとたん、力を発揮できなくなる。

 今まで観察してきた中でざっくり、マネージャとしてイマイチだったタイプをまとめると、「自分がここまでできるのになぜ相手はできないのかがわからないタイプ」、「そもそも周りの人に関心のないタイプ」、「相手を信じすぎてしまうタイプ」などがいたように思います。もちろん、これ以外にもいますけれど、プレイヤとして優秀だった場合、どうしても自分の水準で相手を見てしまう傾向にある。優秀だからこそ仕方のない側面ではあるけれど、相手の立場にたって物事を考えることが、こういった人たちには求められるでしょうね。

 したがって、マネージャは相当賢くなければできません。結論づけてしまえばそうなります。そして、人間がどういう存在なのかを理解するといった、ある種哲学的な観点を持ち合わせていないと、理解できないことだらけで押しつぶされてしまうと感じています。つまり、マネージャには教養が求められるのです。

 プレイヤは、最悪主観でもなんとか成果を出せる*1。精神論だって、自分で自己啓発書を読んで自分を盛り上げれば済む話ですから、有効ですね。自分の成果を最大化できればひとまず評価されるので、難しいことは成果を出すことくらいでしょう。

 マネージャは、主観ではなんとも成果を出せません。そして、客観的にチームを見つめなければなりません。なぜなら、チーム全体で成果をあげなければならないからです。そこには、不合理な存在としての人が現れます。ひとりひとりが内面に持つ基準や価値観が異なるため、精神論が通用しない可能性があります。チームメンバーを最適化しなければなりませんから、誰をどこに配置するか、モチベーションをどう保つかなど、課題がどうしても山積となります。

 このように、プレイヤとマネージャは考えなければならないことが根本的に逆なので、頭を切り替える必要があるのです。

*1:厳密に言えばムリ