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気まぐれに書評とか。

【書評】『この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」』

戦後の政治・外交・エネルギー政策。そしてバブルはなぜ起こったか。日教組とは何か。これらを縦横無尽に、しかもわかりやすく解説した一冊。

伝えられない「戦後史」

戦後史というのは学校では教えられない。なぜなら、戦後史は歴史の授業では教科書の最後の最後にあり、時間がないため学校の先生は教えている余裕がないからである。最近出たサザンの「ピースとハイライト」にも、こんな歌詞がある。

教科書は現代史をやる前に時間切れ

そこが一番知りたいのに なんでそうなっちゃうの?

実際私自身もそのうちのひとりである。学校で戦後史を学んだ記憶はほとんどない。塾ではかなり深く突っ込んで説明されたから助かったものの、塾に通っていなかった生徒たちが戦後史をまったく知らないのも無理はない。

歴史は、後世に伝えることに意義がある。人びとに大戦の過ちを伝えること、バブルの失敗を伝えることなどは非常に大切なはずである。ところがそれがなされていない。日本人はそろそろ、歴史からきちんと学ぶ姿勢を身につけるべきだと本書を読みながら感じた。

昔は日本も今の発展途上国と変わらなかった

今の日本人は、「なぜ暴動を起こさないのか」と言われるくらいおとなしいと、外国の人たちから評されることがある。日本では本当に暴動が起きない。「あまり目立って主張したがらない」という日本人の気質の問題も、確かにあるかもしれない。

だが、1950〜60年代、70年代の日本を見ていると、日本人はそんなにおとなしいばかりの民族ではないとも思えてくる。安保闘争の激しさなどは、本書でも多く語られている。実際に目にしていないからわからないけれど、今の発展途上国と同じような暴動が起きていたのだと思う。おとなしくなったのはむしろ最近のことなのではないか。世の中に対するあきらめがついたのか、それとも今の世の中に満足しきっているのか。

その激しさは、なんといっても死者が出るほどだった。これは今の教科書には書かれていない。「安保闘争がありました」とは書かれていた記憶があるが、それがどの程度の激しさだったかは書かれていない。死者を出してしまったことは反省すべき事態ではないだろうか。その反省を教科書に書かないのは、いかがなものだろうか。

韓国の話

竹島がなぜ韓国に占拠されているか、ということも掲載されていた。あれは明らかに違法であろう。国交のない状態で交渉もなく勝手に国境線を設定するのは、中世のやりかたでしかない。韓国はもう少し「現代の」国家に成長すべきである。

また、日韓条約の話もはじめて聞いた。条約が存在することは知っていたものの、条約の中身までは踏み込んで知ることはなかった。だが、本書にはきちんと掲載されている。一番の問題は、日韓条約の曖昧さだった。韓国の主張する「賠償責任」とやらも、この曖昧さが原因だ。日本はかなり曖昧な外交をしてきており、それによって損をしている。

「曖昧さ」は排除しなければならない。そもそも言語も違う、文化も違う、けれどそういった人びとが「極東」というひとつの地域に存在するのだから、曖昧さを残してしまっては当然喧嘩になる。南京大虐殺慰安婦も、今まで曖昧さを残したままにしたから、今になってツケを払わされることになっている問題だ。日中韓がひとつの会場に集ってきちんと議論する日が来ることを強く望むけれど、それが実現される日は遠いかもしれない。

「日韓条約」「日米安全保障条約」。こういった用語は、たしかに教科書には書かれている。しかし、具体的な内容は、教師が口で説明しなければならないにもかかわらず、私は説明を受けた覚えがない。教師がそもそもこういった用語をきちんと理解していなかった可能性が高い。

私自身、社会を教えているわけではないけれど、一応塾の講師をしている。だから、せめて自分の生徒だけでも、正しい歴史の知識と必要な知識をきちんと説明してあげたいと考えた。