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気まぐれに書評とか。

【書評】『統計学は最強の学問である』

個人的な感想だが、イアン・エアーズ『その数学が戦略を決める』の方が、同じデータ解析・統計解析・データマイニング系では100倍おもしろい。知的興奮を主題としていないのだろうけれど。しかし、あの本を読んだときほどの知的興奮は皆無に等しかったといっていい。私は学者ではないし、疫学系や医学系でもないためにそう感じるのだろうけれど。要するに具体例が身近ではないのだ。

最初の30ページくらいはたしかにおもしろかった。だが、徐々に猛烈なつまらなさが襲ってきた。私はフィッシャーよりベイズの方になじみがあるためである。社会科学系の学部で統計学を教わった者の宿命といってもいいかもしれない。

本書の主張は、数字の見た目に騙されるのはバカ。サンプルちゃんと集めろ。データだけあっても無駄。データに解釈を加えてはじめて、データは意味をもったものになる、といったところだろうか。

データだけあっても、ただの数字の羅列にすぎないのである。それを活用できてはじめて、データは収集された意味をもってくる。よくグラフだけ作って、○○分析だけして満足しているビジネスパーソンがいるけれど、それは労力の無駄だ。そうではなくて、そのデータや分析をもとに、攻勢に転じる姿勢こそが本当に「データマイニングをして戦略を考える」というものである。

あとどうでもいいかもしれないが、平均値と中央値の関係のあの有名な話は、きちんと数字を読む啓発運動として入れたほうがおもしろくなると思った。いまだに日本の多くの資料では平均値が使われているけれど、それは本当にいいことなのだろうか?

統計学とは何かということや大学で統計学をまったく勉強しなかった方にはおすすめできる一冊。統計学入門の入門的読み物としてはおもしろい。私のように少し統計学をかじっていて、しかも社会科学系出身の人の場合は少し物足りなく感じるかもしれない。だが、網羅的に統計学の入門の入門を説明した、バランスのとれた一冊だと思うから、そういう人にもぜひおすすめ。

サブタイトルに"Literacy for the next generation"って書いてあって、教養のところを"Literacy"としているところがまたなんとも洒落っ気があるというか。"Arts"じゃないんだ、とか。そんなことを表題読みながら感じました。