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気まぐれに書評とか。

リーダーシップを考える

リーダーシップを発揮する重要性はかなり叫ばれているのだけど、一体どのように発揮したらよいか、という定型文は、明確には存在していない。(経営学の教科書には、それらしいことは書いてあるけれど)。なぜなら、リーダーシップの発揮の仕方は人によって様々であり、ひとつの法則のようなものは存在しないはずだからだ。

私が参考とするリーダーシップは2つある。ひとつは、伊賀泰代『採用基準』のリーダーシップに関する記述で、これはかなり共感している。詳しいことは本書を読んでいただきたいが、要するに、「リーダーは道を指し示し、それをしつこく伝え続け、自分はその先頭を走り続ける」必要があるということが書いてある。チームを持つことになった人、あるいはこれから働き始める人には本当におすすめできる本だ。

もうひとつは、イタイ・タルガムという人が、TEDの動画で語っていることだ。「偉大な指揮者に学ぶリーダーシップ」というこの動画は、私の理想とするチームをそのまま描いてくれている。チームというのは、オーケストラ(それも一級の)なのである。

リーダーシップは人によってスタイルがまったくことなる、ということは、この動画の数々の名指揮者たちの指揮の方法を見てもらえばわかると思う。なんといってもやはり圧巻なのは最後のバーンスタインの「顔指揮」だろう。はじめてこれを見た時には、迫力がありすぎて涙がでそうになった。そして、この日以来、私はこの域のリーダシップを理想としている。

このレベルのリーダーシップが成立つためには、ふたつの条件があると思う。それは:

  1. 部下にきちんと道を指し示せていること
  2. 部下が、その指し示された道と仕事の意味をしっかり理解していること

バーンスタインは、ほとんど顔の表情だけで指揮をしている。顔で指揮をできる、ということは、その曲の細部の魅力まですべてを顔で表現できなければならない。すなわち、曲を細部まで完璧に解釈し、その解釈を伝えなければならないのだ。

一方で、顔指揮の難点は、相手の顔の意味を理解できなければ音を奏でられないという点にある。部下はまず、曲の意味を自分なりに解釈しなければならない。それに加え、その解釈にもとづいて、さらに上司の意図するところまで感じ取る必要がある。

上司は仕事の意義をうまく部下に伝え、部下は仕事の意義と上司の意図をきちんと理解する。この相互作用によってはじめて、美しいハーモニーを奏でられる。

さらに、バーンスタインの指揮では、ほどよく演奏者は自分の解釈を加えることができるので、結果的に自由な風通しのよいチーム運営ができるというメリットも考えられる。カラヤンは伝えなさすぎだし、ムーティは厳しすぎる。

上司が主体的であることはもちろん、部下も受け身ではなくて主体的に考えなければならないのだ。