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気まぐれに書評とか。

女ごころは残酷だ――『女ごころ』

サマセット・モームにハマって第三弾を読んでみました。『女ごころ』という作品。この本は、ページ数が少なくすぐに読み終えられるので、モーム入門にはいいかもしれません。

女ごころ (ちくま文庫)

女ごころ (ちくま文庫)

主人公はイギリス出身の貴族階級の女性。現在はイタリアに住んでおり、エドガーという男性からプロポーズを受けます。この男性、近々インドの提督になることを約束されたすばらしい男性ですが、歳が20歳上。昔から主人公の女性のことを知っていて、少女の頃から彼女を愛していたそうです。長年の恋、ようやく実ったといったところでしょう。

ただ、エドガーからプロポーズを受けたとき、返事を渋ってしまいます。2、3日待ってからもう一度返事をすると言って、一旦彼との今後を考えることにしました。そんななか、晩に参加したパーティーで事件が起こります。チャラくて浮気性の男(と噂されていた)ロウリー、さらにそのパーティーにたまたま招かれていた下手なヴァイオリン弾きであるカールと出会うことになりました。

途中からロウリーに口説かれ始め、車に乗って少しドライブしたところでやっぱりロウリーが気に入らず、いったん自分の家に引き返す途中でヴァイオリン弾きのカールと出会います。そこからカールを自分の家に引き込み、話をしているうちにカールに惹かれ、カールとワンナイトラブを過ごしたところで事件は急展開。カールが主人公との永遠の関係を迫りますが、主人公にその気はなく、カールはなんとその晩に彼女の部屋で自殺してしまいます。ここまで、経過した時間を想像すると半日も経っていない。プロポーズを受けてから12時間くらいと言ったところでしょうか。

その後、カールの遺体を巡って主人公はほんとうにどうしようかわからなくなってしまいます。遺体を隠すべきか?それとも、知らない男を家に招き入れたことを白状するか?迷ったとき、ロウリーの存在を思い出します。そして、ロウリーに連絡を入れてしまう。

で、ここからロウリー登場であとはわかりますね。女としてはやはり、捨てられるとわかっていても、傷つけられるとわかっていても、危険な男性を求めてしまうということがよく描かれています。

『女ごころ』というタイトルですが、男ごころについてもなかなか深い洞察があって、とくに次のロウリーのセリフが好きだなと個人的には思いました。

知るかぎり、僕が自由にできる人生はこの一回だけ。とっても気に入っているよ。折角与えられた機会を活かさなかったら、それほどバカなことはないじゃないか。僕は女が好きだし、不思議なことに、向こうも僕を好きらしい。僕は若いし、若さなんていつまでもあるものじゃない。機会が与えられている間に、できるだけいい思いをして何が悪い?

このセリフからもわかるように、ロウリーは、噂では浮気性で何も考えない男などと言われてみましたが、実は意外に冷静で策略家で思慮深く、そこに主人公は惹かれてしまったのでしょう。最後、結局エドガーとは婚約することなく、ロウリーと人生をともにすることを選びました。

サマセット・モームの魅力

いったいモームのどこがおもしろいんだ、と言われるとなかなか難しいです。今回の『女ごころ』も、正直時代が違いすぎますし(なんてたっておそらく60〜70年前のイタリアが舞台ですから)、日本とヨーロッパとでは文化も違いすぎます。そもそも夜にパーティーなんてそう頻繁にこの国ではやりませんしね。貴族階級なるものも、とうの昔になくなってしまっています。

が、人間の本質って文化によらずどこか変わらないところがあって、心を許してしまった相手であればやすやすと部屋に招き入れてしまいますし、その後どうなるかを考えずに勢いと思いつきで行動してしまうところもまた、文化の差ではなく人間の本質なのかもしれません。そういった人間ってこういうところあるよね、がふんだんに作品内に散りばめられているのがモームの魅力なのかも、と個人的には思います。

大女優はこういう恋愛をする

サマセット・モームにハマって、短編集を読み、その次に『劇場』という本を偶然近くのブックオフで発見し、読んでみました。ブックオフで買った際にこの本に新聞の切り抜きが挟まっていて、その記事に『劇場』の映画の話が書いてあって、とても興味をそそられ買いました。

まず結論からいうと、これは映画になって然るべき作品で、映画にしてもとても楽しめる作品だと思います。ある若い女性が激しい恋をしながら大人の女性になっていくさまが、綿密に描かれています。舞台女優という職業柄、どうしても恋がないとすばらしい演技を続けられないのでしょう。最後は演技によって、自分自身を縛っていたしがらみを振りほどいていく。それが描かれています。

主人公ジュリアはイギリスの大女優です。その大女優は、イギリス一の美男子との呼び声高いマイケルと結婚します。しかし、美人な彼女は、たくさんの魅力的な男性たちに言い寄られ、多くのアバンチュールを経験します。その中でトムという若い男性にぞっこんになります。

しかし、トムはまだ若く、彼も別の女性に惹かれ…で、トムに嫉妬してジュリアは大変なことになります。最終的にはトムに振られ、失恋期間を過ごすことになり、そのときに支えてくれたのがマイケルでした。

それまでマイケルとは良好な関係とは言えず(最近よくある中年離婚しかけの夫婦ですね)、マイケルを疎ましく思っていました。しかし、マイケルは長年なんだかんだジュリアをずっと見てきただけあって、優しくジュリアを慰め、ジュリアを再び舞台に立たせることになります。マイケルはちなみにトムやその他の男性とのアバンチュールには気づいていないように描かれています。

個人的には最後のほうでジュリアが立ち直って、舞台上でトムの惹かれた相手を熟達した女優の力量でコテンパンにしてしまうシーンが好きで、スカッとしました。終わりがとてもスカッとする小説です。サマセット・モームは本当にストーリーの進め方がうまいですね。次もまた読んでみようと思いました。

劇場 (新潮文庫)

劇場 (新潮文庫)

読了後、精神年齢が少し上がる(かもしれない)――『月と六ペンス』

買ってしばらく経ってしまっていましたが、ようやく読み終えました。あまりに有名すぎる本。サマセット・モームの本。「六ペンス」とは富の象徴で、その意味かと思ってWikipediaを開いてみたら、そうじゃないらしいです。月とは夢のことで、6ペンスとは現実のこと、だそうです。そういえば Sixpence None the Richer というアーティストがいるけれど、その6ペンスとは意味が違う模様。たしかに、と本書を読了してから思いました。

Sixpence None the Richer は Kiss Me という名曲がありますね。この曲も、中に moon light とか月に関連する詞が出てきて、もしかしてこの本と関係ある?と思うかもしれませんが(げんに、読む前は思いました)、読了後わかるとおり無関係のようです。


Sixpence None The Richer - Kiss Me (Official HQ)

この本は、とくに若い女性に読んで欲しいです。とくに、恋愛経験の少ない女性に読んで欲しい。あるいは、最近男に傷つけられた女性にも。そして何より、男心がさっぱりわからない女性に読んで欲しい。女心もなかなか難しいですが、それと同じくらい男心というやつも難しいです。反故にするとすぐに女は捨てられます。その際、男のほうがより残酷に捨てると思います。そのことがよくわかります。

男心の核心をひとことで表すというのは愚かな行為かもしれませんが、誤解を恐れずにひとことで表すなら、「放っておいてくれ」ということです。男はプライドの高い生き物で、自分の世界をあまり干渉されたくない生き物です。それはストリックランドの振る舞いを見ていればわかるでしょう。自分の世界とはどういうことかというと、自分の理想です。それを失った時、あるいは邪魔をする女が現れた時、「放っておいてくれ」という気持ちになるのです。

それはすでに結婚した妻に対してでも容赦ないときがあります。女も確信を持つと突っ走って人のいうことを聞かなくなる傾向にありますが、男も同じなのです。ただ男と女とで唯一違うところがあるとすれば、女は多少の情を持って「捨て」ますが(それが「距離を置く」なんていう行為になって現れる)、男はバッサリと切り捨てます。情よりも自分の理想が優先されます。ストリックランドを見ているとわかると思います。

男の生きざま、というやつは次の一節によく描かれています。そして、それは多くの女性の感覚とは相容れないものだと思います。だからこそ、男女はどこまでいってもわかりあえないのです。いうなれば、別の惑星から来た生き物なのです。

安定した生活に社会的価値があることも、秩序だった幸福があることもわかっていた。それでも、血管をめぐる熱い血が大胆な生き方を求めていたのだ。安全な幸福のほうにこそ、空恐ろしいものを感じていた。心が危険な生き方を求めていた。

一方で暖かい家庭を持ちたいと思いながら、他方では仕事で成功を収めてお金をたくさん稼ぎたい、という矛盾した願いを抱いている人間がいるものです。もちろん、男女問わずです。人間とは本来矛盾した存在であり、気まぐれで、一筋に説明することが難しい存在でもあります。

サマセット・モームはそんなことはお見通しで、次の文章を本書の中に残しています。

わたしはまだ、人間がどれだけ矛盾に満ちた生き物なのかわかっていなかったのだ。誠実な人間にも偽善的な面は多くあり、上品な人間にも卑しい面は多くあり、また罪深い人間にも多くの良心がある。

そんな難しい存在に対して、自分の小さな色眼鏡でもって人を判断しようとするから、その人の一言で勝手に傷ついて心を閉ざす。そもそも人と接する際の前提が間違っています。「そういう人なんだ」というくらいの心持ちで他人には接しないと、精神がいくつあっても持ちません。

普段は優しい人でも、突然怒りたくなることだってあります。小さなことにムッとします。一方で、怒りっぽくて常にイライラしている人でも、優しい面を持ち合わせていたりします。誠実そうに見えて、意外に浮気症という人もいるくらいです。人間、ひとつのカテゴリに収まらないくらいいろんな性格を持った人がいます。

そういうことを教えてくれるという点で、この本は読み終えると精神年齢が少し上がるかもしれない。そんなことを思いました。

月と六ペンス (新潮文庫)

月と六ペンス (新潮文庫)

諦めずに読めばわかる――『重力とは何か』

一般相対性理論とか、量子論とか、本当は数式をきちんと読んでいくのがこの手の分野の正しい学習法だというのは痛いほどわかります。数式を読まずにわかったつもりになるのは危険です。しかし、専門家でない私たちはある程度の「感覚」が得られればそれでいい…そう考えている人は多いはずです。

そんな科学好きの一般読者に向けられて書かれたこの本は、「感覚」を得るにはうってつけだと思います。多少わかりにくい記述があっても、根気強く読んでいけば必ず理解できるように書かれている。それが、この本だと思いました。私も、何度かよくわからなくなる場所があったのですが、自分でネットで調べながら読んでみたらなんとかなりました。読書の楽しみを思い出させてくれました。

重力とは何か。これは難しい問いです。私の理解では、重力は鉄球とスポンジで説明できると思っていました。鉄球が大質量の物質で、スポンジがそれを受け入れる空間だとします。鉄球をスポンジの上に置くと、鉄球の周囲が凹みますよね。これが重力の正体なんじゃないかと。鉄球でできた凹みに向かって小さなパチンコ球を転がしてやると、パチンコ球は鉄球に引きつけられます。また、もしパチンコ球が鉄球の周りをルーレットのように回るとしたら、遠心力と重力とが釣り合って、公転のような現象が起きるかもしれない。そのくらいの理解でした。

本書ではじめて知ったのですが、重力を説明するには上記の話に加えて、「欠損角」という概念が必要になってくるとか。この欠損角があると、1周が360度だった空間が300度になったり、330度になったりします。そしてこの欠損角こそが空間の歪みの源泉なのだと。なるほどわからん、というのが正直なところですね。

個人的に興味をそそられたのは、あまり自分でも理解していなかった超弦理論のところでした。まず超弦理論とは何かというと、原子よりもさらに小さな宇宙の最小単位を研究する理論です。宇宙の最小単位は実はすでに存在自体は証明済みで、あとはそれを観測するだけなのだとか。そして、その最小単位を考えるのが超弦理論、というわけです。

原子よりもさらに小さな宇宙の最小単位のことを「ひも」とか「弦」と呼びます。この弦は6次元(!)の構造を持っています。なぜ「弦」と呼ぶかというと、ギターなどは、弦の震え方を指の位置で調整して音の高さを調整できますよね。あれと同じ原理で、宇宙の最小単位も弦の震え方を変えることで発現する状態が異なるからなんだそうです。

当たり前の話なのですが、超弦理論は宇宙の最小単位を扱う理論です。つまり、それ以上小さいものがない、というものの謎を解き明かす分野です。これは最も確実な理論なんじゃないかと思います。まずは「弦」の存在が観測されないといけませんが、あるといいななんて夢を抱かせてくれます。

手っ取り早く宇宙の最新理論について理解するのにオススメ

もちろん、この手の話は専門とするのであれば数式を見て、自分でその数式を解いてみてはじめて「理解した」といえるのは間違いないことなのですが、門外漢の我々にとってそれは手間暇があまりにかかりすぎます。だから、せめて最新の宇宙理論で扱われている概念のさわりだけでいいから理解したい、という人にはオススメできる一冊です。自分で色々調べていて思いましたが、本書はどうやらこの分野の基礎部分をいい感じに抑えているようです。

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

2016年上半期、読んでよかった本

長期休暇につき、たまには本のことを思い出して書かねば、という思いに駆られて書く。あまりいい言葉ではないけれど、今年は本当に忙しく、本を読む時間が電車の往復30分間だけ、という時期が数ヶ月続いています。したがって読んだ冊数も少ないですし、疲れて半分寝ながら読んでいた本もあるので、内容を覚えていないこともしばしば。

最近こんな記事を見かけました。半分あたっていて、半分あたっていないと思います。しかし、参考にはなります。

結論からいうと、デキるひとたちは集中したインプットをしています。 みんながみんなというわけではありませんが、頭の回転がすごいひとというのは事前に膨大な量のインプットをまとめて行っている可能性が高いです。 取り組む前にまとめてインプットしておくことで全体像を把握でき、また勉強にかかる時間も減らせる。 彼らはあまり語りませんが、実は裏でやっているというパターンがほとんどです。

デキる人の勉強法 優秀なプログラマは何をしているのか - ケーススタディの人生

この記事内で忘れられていることが1つあります。それは、集中したインプットを可能にするのは、日々の継続的なインプットである、という前提条件です。集中してインプットするということは、短期間に大量の概念を学習するということです。しかしそれは、普段ろくに勉強をしていない人には不可能な話です。

だから、継続的なインプットをし続けるためにも、寝ながらでもいいからとにかく文字を読むことが大切ではないかと思っています。そして、すぐには役に立たないかもしれないけれど、将来的にいつか役に立つかも、という意気込みで最近は本を読んでいました。そんな上半期の良かった本8選です。

とくにテーマがあって選んでいるわけではありません。「いい本」の基準は、どうやら読んだ時期によって違っているようです。もっとも、「いい本」はかならずしも役に立つ本ではないし、何かの役に立たせるために本を読んでいるわけではありませんが。

  1. 『職業としての小説家』

職業としての小説家 (Switch library)

職業としての小説家 (Switch library)

数々の小説を世に送り出してきた村上春樹の書く、ある種の自伝です。有名すぎる本かもしれません。この本から非常に多くの影響を受けたように思います。優雅に見える村上春樹ですが、しかし裏ではかなりの泥臭い勝負をしていた事実が明らかにされます。村上春樹はどちらかというと計画的に物事を進める方ではなく、自分の感性に任せて思いつきで進める方なように感じました。私も村上春樹と同じようなタイプなので、共感できるところが多々ありました。

何かを極めるには、1冊の本になるくらい思考できなければならないんですね。改めて、一流に上り詰めた人のすごさと強さを感じた一冊でした。

  1. 『BCGの特訓』

BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制

BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制

3回くらい読みなおした本。今読みなおしていたら、また読みたくなってきた。BCGはほぼ同業者なので、参考になることがとても多かったです。この本にかぎらず、成長する人、成長して一流に上り詰める人にはどうやらこの一文が共通して当てはまるような気がします。

BCGには、頭を使わず、ただこなすだけの作業は存在しない。

  1. 『「社会調査」のウソ』

世に言う「アンケート調査」がいかに怪しく、根拠に乏しいものかという話。さまざまな新聞のアンケート調査(筆者はそれを、「ゴミ」と呼ぶ)の欺瞞をつまびらかにする本。非常に影響を受けた。すくなくとも、新聞やネットのアンケート調査結果を疑って見る目はついた。

アンケート調査の大半は、「バイアス」を免れていないように思います。それはアンケート調査するターゲットに問題の大半があるようです。サンプルが少なすぎたり、サンプルを考えなしに選んだ故にサンプルの属性が偏っていたり、あるいは、自分の考えた結論を適当に裏付けたいがために、そうなりそうなサンプルを選んでいたり。テレビに多いですね。

  1. 文化人類学への招待』

文化人類学への招待 (岩波新書)

文化人類学への招待 (岩波新書)

いつか時間ができたときに、徹底的に学んでみたい分野、「文化人類学」。現代の社会問題を考えるときに、まずまっさきに考えるべきだと思うのが、「そもそも人間って、どういういきものなんだっけ」ということ。この視点って仕事をしているとどうしても忘れられがちなのですが、大事だと思うんですよね。仕事の場面では、常に理性を偏重することを求められるのですが、案外それが働く人を苦しめていたりする。そんな視点を提供してくれるのが、この文化人類学だと思っています。

あと個人的には、フランス現代思想のポスト構造主義あたりを深く理解するためには必須かもなあという考えから、読んでみました。

  1. 純粋理性批判

純粋理性批判 上 (岩波文庫 青 625-3)

純粋理性批判 上 (岩波文庫 青 625-3)

学生のときは特定の章だけしか読んでいなかったのですが、3週間くらいかけて通読してみました。思った以上にしんどい。いろんな概念が登場してきて、それらを整理しながら読まないとダメです。時間ができたときにじっくり再読しようかと思います。

アプリオリな総合判断は可能か、というのがこの本の主題なんですが、そもそもアプリオリなものって存在するんですかね。結局人間がいないとあらゆるものは存在しているとは言い切れないと思うんですが。でもそうすると、惑星とかのように人間が出現する太古からあるものはどうやって考えればいいんでしょうか?「存在」という言葉にそもそも誤りがあるんでしょうか?あるいは、言葉の限界なんでしょうか?そんなところを考えさせられます。

  1. 『実践ドメイン駆動設計』

実践ドメイン駆動設計

実践ドメイン駆動設計

これを読んで、とりあえずウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」を思い出した。結局、チーム内の言語ゲームを理解しないと大規模システムの構築はうまくいきそうにないなと。そんなことより、個人的にはRepositoryとかEntityとか、そういうスニペットが非常に役立っています。コードを読むときに非常に役に立っています。一読の価値ありです。

  1. 『ギリシア人の物語』

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

古代ギリシャ好きにはたまらないですね。テルモピュライの戦いのところがやっぱ最高でした。これぞ塩野クオリティ。今年の年末にもまた出るんですかね?もちろん買いです。

  1. 『国家はなぜ衰退するのか』

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家間でなぜ貧富の差があるのか?その謎を解き明かす一冊です。個人的には、私有財産制の重要性を思い知らされました。

Mac OS XでPython2.xからPython3.xに切り替えた話

少し手元でPythonを使いたいタイミングが生じてきたので切り替えを行ったのですが、結構面倒だったのでメモします。いい方法を知らないだけかもしれませんが。今年の3月くらいに自宅用のMacBookProを切り替えたのですが、Pythonのバージョンを確認したところバージョンが2.7で、3.x系を使いたいけどどうすればいいんだろう・・・?と思って色々調べたまとめです。

なお、今回はpyenvを使用しますが、システム本体のPythonバージョンを引き上げればよいのでは・・・?という向きもあるかもしれません。しかし、システム本体のPythonを引き上げてしまうと、3.x→2.xに戻したい際に手間がかかるのと、色々ハマるらしいのでやめました。実際、pyenvで切り替えを管理するほうがはるかに楽だと思うので、そちらをおすすめします (2017-07-10追記: anaconda を使う手もあります。というか、最近はそうしてしまっています。)。

まずやること

当たり前ですが、この作業を始める前にひとつだけ確認事項があります。Pythonのバージョンを確認しましょう。

python --version

これで、Python 3.x.xと返ってきていれば、この作業はまったく必要がありません。一方で、Python 2.x.xと返ってきてしまった場合は、この作業が必要です。

手順

下記の手順で行えば、まともに動くかと思います。

  1. Homebrewをインストール:今回の記事では割愛しますが、インストールが必要です。
  2. pyenvをインストール:Homebrewを使用してpyenvを入れます。
  3. pyenvを使って、Python3.x.xをインストール:コマンドひとつです。
pyenvをインストー

Homebrewがインストールされていれば、下記のコマンドを打つだけでインストールできます。

brew install pyenv

しばらくすると、インストールが完了した旨のメッセージが出ます。念のため、下記のコマンドを打つと確実です。pyenvが入っていれば、バージョン情報が表示されます。

pyenv --version

それを確認できたら次の作業に進みましょう。

pyenvを使って、Python3.x.xをインストー

pyenvを正常にインストールできたら、次は環境変数を通す必要があります。結構面倒な作業で、初めてやるときは苦戦しますので、丁寧に見ていきます。

.bach_profileがあるかどうかの確認

まず、手元の環境に.bash_profileというファイルがあるかどうかの確認が必要です。ここに環境変数を設定しますので、このファイルが存在しなければ作成する必要があるためです。次のコマンドを打つと確認できますので、目視で確認してください。

cd ~
ls -la

もし、.bash_profileがなかった場合は、次のコマンドを打って.bash_profileを作成します。勝手に作っても問題はありません。

touch .bash_profile

完了したら、作成できたかどうかを確認します。

ls -la
環境変数を通す

vimを起動して、下記のコードを.bash_profileに書き込みます。

export PATH="$HOME/.pyenv/shims:$PATH"

vim:wqコマンドで保存します。そして、忘れてはならないのですが、.bash_profileに設定した内容を即刻反映させないと、あとの作業で「あれ?環境変数が切り替わってないぞ?」となってしまうので、下記コマンドを打って変更内容を反映させましょう。

source ~/.bash_profile

最後に、下記コマンドを打って正しく設定されたかどうかの確認作業をします。

which python

ここに、pyenvのパスが表示されていれば正常に設定完了です。

インストール可能なPythonの確認と、インストー

インストール可能なPythonのバージョンは下記コマンドを使用して確認。

pyenv install -l

次に、欲しいPythonのバージョンを決めてインストール(今回は3.5.0が欲しかったので、3.5.0をインストールします。他のバージョンでも同様です。)

pyenv install 3.5.0

このコマンドを打つとインストールが始まりますので、しばらく待ちましょう。通常終了した場合は、次のコマンドを打って、使いたいPythonのバージョンを指定します。

pyenv global 3.5.0

あるいは

pyenv local 3.5.0

globalを指定すると全体に適用でき、localを指定すると特定のディレクトリに対して指定できます。

(2017-07-10追記) 反映がうまくいっていなさそうな場合、pyenv rehashを打つとバージョンの変更が反映されます。

設定方法は以上です。

知っておきたい「お金の教養」

最近生命保険の営業を受けたり、周りの結婚話を聞くようになってきました。それを聞くたびに、歳を重ねたなあと感じると同時に、「意外に世の中のことがわからないぞ」という不安に駆られてきます。そんなこんなで、随分前にライフネットの出口さんが講演中に「今度、若い人向けのお金の本を出すから読んでみてよ」と言っていたことを思い出し、読んでみました。

「お金の教養」というと、どうしてもファイナンシャルプランナーの試験のような、○○金はこうで、○○保険はこうで・・・というような堅い内容を想像しがちですが、この本は少し毛並みが違います(逆に言うと、そういう内容を望んでいる方には物足りないかもしれません)。この本は、人生の先輩が、若い人に「こういうふうにお金を考えるといいかもね」と教えてくれる本だと思います。「考え方」というのは、すぐには役に立たないかもしれませんが、しかし一生使えるものだと思います。その点で、私はこの本を今の時期に読めてとてもよかったかなと思っています。

普段本を読まない人にもこの本はぜひ読んでみてもらいたいです。もっとも、「考え方のひとつ」として客観的に読むのがいいと思います。出口さんもそれを望んでいるはずです。

1. よくある「若者は損をしている!?」の話

さっそくですが、みなさんは「世代間格差」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「世代間格差」とは、主に年金を受給する際の文脈で出てくるものですが、自分たちが支払った保険料に対して、そのもらえる年金の総額に世代ごとに格差があることです。要するに、今の60代は払った額に対して4倍の年金をもらえるのに、今の20代は払った額の2倍の年金しかもらえない(可能性が高い)ということです。

世代間格差の議論は色々巻き起こっていて、経済学者がいたるところで論じている話題でもあり世間的な関心度も高いと思います。しかし、この問題は結局感情論にしか終始しないと思っていました。なぜなら、日本は1970年代とか1980年代と比べて、人口も減少していくに決まっていますし、GDPも確実に下がっていくことが目に見えているからです。そんな状況下で、もらえる年金の総額が増える(あるいは、上の世代と同じくらいもらえるようになる)なんてことはありえません。ありえない話を望むとき、どうしても私怨以上のものは生まれなくなります。だから、感情論にしかならないのです。

この世代間格差を考えることは、経済学者の飯の種にはなるかもしれませんが、私たちのような一般人が毎日ウンウンと考えていてもどうしようもない話なのです。

出口さんも、本書の中で「世代間格差は諦めよう」という話をしています。「大切なのは、できないことを考えないこと。つまり『解』にならない悩みは捨ててしまう、ということです」と言っています。まったくそのとおりだと思います。私たちのような個人が世代間格差をいくら考えたって、解決しようがありませんので。厚労省などに務めている、ということであれば別ですが・・・。

2. 大切なのは「調査」と「比較」

世代間格差に象徴されるように、今の若い人は私たちの上の世代の人たちの若いころと比べて、相対的に収入が少ないです。世の中の人たちは、若者の○○離れと言って若者に「もっとお金を使え」と煽りますが、なんせ使う元手がないのですから、そのような贅沢品にお金を使っている余裕がありません。

私の同期など、周りの人たちもそうなのですが、みんな「いかに安いものを買うか」ということに腐心しています。みんな節約して貯蓄しています。そのような中で問題になってくるのが、「倹約しつつ上手に物を買うためにはどうすればよいか?」ということです。これに関して、この本では少し話が出てきます。

物を上手に買うためには、「調査」と「比較」が大切だと言います。節約して貯金をするためには、少しでも物を安く買う必要がありますが、その際に重要になってくるのが「調査」と「比較」。「同一商品や同一サービスは、比較して価格の安い方を選ぶ」が鉄則です。当たり前の話なのですが、意外にやっていない方も多いのではないでしょうか。私も時々やらずに後悔することがあります。「しあわせにつながらない消費すなわち浪費は、できるだけ削っていきましょう」です。

3. 独身のうちから生命保険に入るべきか?

倹約・節約するうちに気になってくるのが「固定費」の問題です。ファイナンシャルプランナーにくる相談の中でも、特に「固定費の削減」というテーマは大きなテーマになっているそうです。固定費を削るために考えられるのは、電気代、水道代をはじめとする光熱費や、ネット料金など・・・。しかし、光熱費を削るにも限界がありますし、ネット料金などの通信費は、格安SIMなどを強引に使わないかぎり、どこの会社と契約しても大きくは変わらないです。

ところで、固定費の中には将来のために重要なお金も含まれます。それが「保険料」です。そして、保険料の見直しもまた、ファイナンシャルプランナーに多い相談のひとつだそうです。保険に入るなら少しでも安い保険がいい。そう誰もが考えるはずです。

生命保険は一般には結構な額です。私も生命保険の営業を受けてから調べてみましたが、1万〜2万程度してしまいます。住民税より高いのです。手取りが30万円にも満たないのに、そこまで大きな額を払うとなると、飲み会や旅行を何回も我慢しなければならなくなります。そんな人生、少し嫌だなと個人的には思います。若いころの方が、体力も気力もあります。その若いうちに、人生を楽しんでおきたい。そう思うのは自然な発想です。

日本では若いうちから生命保険に入っておく、というのがある種の人生のロードマップみたくなっている節がありますが、ヨーロッパなどではそうではないようです。ヨーロッパなどでは、どちらかというと「就業不能保険」の方が、若いうちに入る保険としてはメジャーなのだそう。生命保険の営業マンに就業不能保険のことを聞いたら、「なんですかそれ?」と言われてしまいました。トホホ。そのくらい、日本では知られていない保険、ということです。

就業不能保険というのは要するに働けなくなったときのための保険だそうで、一時的に休業が必要となった段階から毎月一定の額が支払われるそう。調べてみたところ、月に15万〜20万くらいの収入を保証してくれる保険だそうです。生命保険ほど手厚いわけではありませんし、「自分が働けなくなった場合」を限定的に想定した保険ですから、家族がいないうちにしか使えません。しかし、独身であるうちはこれで十分、と考えることもできます。月額3000円程度のものがほとんどで、とても合理的な保険です。

結論: 貯金をしながら自分の好きなものにお金を使うために

日本人の美徳として、とにかく貯金をしろ!結婚しても、子供が生まれても、子供が巣立っても、貯金をしろ!マイホームを買って、自動車を買うために!というものがあります。しかし、それはこれからの時代も通じるかというと、そうでもないと私は思います。

ダーウィンの進化論などを見てもわかるように、これからの時代を賢く生きるために重要なことは、とにかく変化に柔軟に対応できるようにする、ということでしょう。そういう生物がこれまでも生き残ってきました。「適応」こそが、これからの時代の美徳となるべきものです。

変化に柔軟に対応できる家計をもつためには、どうすればよいでしょうか?ひとつは変動費を増やすことです。逆に言えば、固定費をできるだけ削っておくことです。変動費はその名の通り変動させられます。したがって、自分のコントロール下に置きやすいです。あらゆる契約を行う際に、「柔軟性がどれくらいあるか?」を考慮すべき、ということです。

そして固定費を削るためには、お金に関する知識が必要不可欠になってきます。お金に関する知識を増やすとは、たとえば保険に関して言えば先ほど書きましたとおり、「生命保険」一択に見える保険も実は、ライフサイクルのフェーズごとに使い分けができることを知るなどといったことです。要するに、「調査」と「比較」を丁寧に行うということでしょう。必要のない時期に無駄なお金を消費しない、ということです。

一方で、生命保険には安心料の側面もあります。貯蓄型であれば、その会社が潰れないかぎりは満期でお金が返ってきます。掛け捨てではそれがないため、少し不安になります。柔軟性を高めるということは、リスクの高さを受け入れるということでもあります。ボラティリティの高いマーケットほど、より儲かる確率も損する確率も高まるのと同じことです。

もっとも、「変化に対応できる未来型の柔軟な家計」と「これまでの日本人がやってきた一般的な家計」のどちらがよりリスクが少ないか、というのは神のみぞ知る話です。日本で突然資源が取れ始めて、日本が急成長する可能性もなきにしもあらずです。それこそ、「大切なのは、できないことを考えないこと。つまり『解』にならない悩みは捨ててしまう、ということです」なのかもしれません。